本編その3

実際の所、彼(ギャレット)は理想と現実のギャップ=(先輩達の真実の姿)を見るにつけ本気で転職を考えていた。そうしなかったのは、単に血気盛んである彼にとって公然と暴れまくる場(しかも給料付き)が無くなる事が寂しく、また自分のエルミナへの恋心(本人否定)ゆえなのであった。

「俺は本当に道を過っちまったんではないだろうか?ああ、早まったぜ。あん時にあのおっさんさえ・・・」

〜回想シーン〜

その時ギャレットは酒場にて酒をしこたま喉に流し込んだ後だった。
「今度も俺の勝ちだぜ」
「どうしたい、じいさんまだやるのか?」
と何やらカードゲームに興じているらしい男達の声のする方を見て、ギャレットは思わず口に入れた酒を吹き出した。

「ザ、ザックじいさんじゃねえか?!」
その老人は背負い袋(ザック)をいつも担いでいて、人様から恵んで頂いた物や拾ったガラクタを入れて持ち歩いている。なので、素性の知れないこの老人を誰とも知らずザックじいさんと呼んでいるのである。運良く金が手に入るといつも顔を赤くしている(←酒を飲んでいる、の意)という天涯孤独の家無しなのであった。そしてどうやらザックじいさんはほんの数カ月前にこのアークティカの城下町に辿り着いたらしい。ギャレットとどっこいどっこいな位か。
( そのじいさんが賭け事だって?! おいおいおい、ちょっと待てよ! )
ギャレットにはザックじいさんが進んで賭け事をするとは思えなかった。理由は判らないが、良く見ると相手の男達はイカサマ師でちょっと名の売れた奴等である。とすれば、増々じいさんが騙されている可能性が高い。

と、思っている間にお定まりの笑える程筋書き通りの成り行きになった。
「この老いぼれめ」
「ずいぶんといい覚悟じゃねえか」
と罵声を浴びせ始めた。
賭け事に興じる男達のケンカは日常茶飯事だったが、思わずギャレットは今にも袋叩きに合いそうなザックじいさんを助けるべく男達の間に割って入っていた。

「おいおいおいっ、てめーらてーげーにしろいっ。こんなよぼよぼの老人を相手に随分と阿漕な事をするじゃねえかっ!」
と多少呂律が回らなくなりながらもギャレットは大声で怒鳴り付けた。

「酔っ払いはすっこんでろっ」
「そうだそうだ、てめえにゃ関係ねえだろうが」
と男達はギャレットを睨んで言った。

「いんや、弱い者がイカサマ師達に騙されて身ぐるみ剥がされるのをみすみす見過ごす訳にャいかねえ!」
とギャレットも睨み返す。

「へっ、何にも知らねエ癖に。あのなあ、このじじいこそイカサマやりやがったんでぃ」
と男の1人がザックじいさんを指差して言った。

「はぁ、何だってェ?」
とギャレットは一瞬気が抜けたものの、取り直し
「しょっ、証拠はあんのかよ?大体てめえ達は、自分達が普段からそんなしょーも無い事ばっかりやってやがるから、人の事もそんな風に見えるんだ!」
と無理矢理ぴしりと決め付けた。

「何おう、貴様やんのか?こらぁ」
と男が対戦を申し出
「おう、上等だ、かかって来いや」
とギャレットが応戦した。

「わああ、お客さん、頼む。外でやってくれえ〜〜」
との店主の声も空しく、カーン、とゴングは鳴り響き、派手なケンカの始まり始まり。

椅子やテーブルは飛ぶひっくり返る。殴り合う。どたんばたんとぶつかりあう音。他のテーブルの上の物も辺りに舞う。グラスや酒瓶は床に粉々に砕け散る。はやし立てる者もあれば、女の悲鳴も上がる。まさに店内は混乱状態。

2対1ながら中々の良い勝負である。
だが、遂に
「ええい、こいつで勝負だ」
と男が剣を抜いた。途端に辺りは静まり返った。

「待てよ! そんなもん振り回したら、関係無い人達にまで迷惑が掛かんだろうが」
とギャレットは驚いて言った。

それを見て急に調子づいて男は言った。
「何だ、臆したのか。この腰抜け野郎!」

ギャレットも酒が入っていたのだけが理由では無い。男の誇り故に答えてしまったのだ。
「あの世で後悔しろよ。バカが!」

だが、実際に剣を交えると一転してギャレットは劣勢に立たされた。辛くも攻撃はかわしてはいるものの、どう見ても危なっかしい剣捌きなのである。見ている者達はハラハラであった。

(いけねえ、動き過ぎて完璧に酒が回っちまった。気持ち悪ぃ。喉元まで、ううっ、来た・・・)
とギャレットは込み上げる吐き気に気を取られた。一瞬テンポがずれる。相手の剣が 脳天に打ち込まれる!!、とギャレットが思った瞬間・・・
キィンとそれを弾く音がした。

「喧嘩両成敗!! しかし、2対1では黙っておれん。もうここまでにしておけ。ついでにこの店内の弁償もして行ったらどうだ?」
と強面の騎士らしい男が言った。

「何だと。今日は本当におせっかい共が多い日だぜ。余計な事するんじゃねえ! てめえは誰でぇ」
と男は騎士に向き直って言った。

「まさか!?、お前達は今週のアークティカ通信を見ていないのかッ!」
と騎士が驚いて叫んだ。
すると、男達は
「見ていない訳ないだろう。何しろあれには、あっ!」
「えええ、その顔。もしや、アーマー?ひっ、ひぃぃ」
と男達はいきなり泡を食って(律儀にも)財布をテーブルに置いて逃げ出した。

「何なんだ?あいつら。おい、あんた、助けてもらった事になるが、礼は言わねえよ。あんた誰なんだ?」
むしゃくしゃが収まらないギャレットは男を睨んで言った。しかし、男はそれには答えずに冷ややかにも思える程、平然とギャレットを見て言った。

「お前、その剣技は誰かに教わったものなのか?」
と聞かれたギャレットは、先に質問したのは自分であるのを忘れ思わず答えた。
「いや、俺のは『俺様流』さ。誰からも教わっちゃいねえ」

「うむ、まさにそうだろうな。その太刀筋。まるで滅茶苦茶だ。そこまで我流なら今更矯正しても無駄だろう。どんなに頑張ってもお前は恐らくせいぜい子供達に『へっぽこ剣士!』の名で呼ばれる程度にしかならん。だが・・・。お前の打った中で1つだけ全く予想外の動きをした筋がある。
余程下手な太刀筋でも、私なら大概の予想は付く。が、あの一筋だけはこの私にすら全く想像の付かない、すっとこどっこいな動き方だった!こんな事は初めてだ!!うむ、、まさか!?いや、だが・・・可能性は捨て切れん。一か八かは趣味では無いが、選り好みしている暇も無い。この際ダメ元でやってみるか!よし」

「もしも〜し、自分の世界に浸り切って、いよいよもって人をおいてけぼりかよッ! 誰だか知んねぇけど、よくよく聞いてりゃ嫌味な位にズケズケッと、何の遠慮会釈もねえな! ホントにこうも俺の剣技を糞味噌におっしゃってくださるとは、さぞかし気分も良い事だろうて。だから一体、あんた誰なんだ?」
と、ムッとしながらギャレットは言った。

すると男は
「お前、アークティカの者なのか?」
と聞いた。

「いいや数カ月前にここへ流れ着いたのさ。仕官の口を探しにね」
とギャレットは答えた。

「だが、その腕では役職にはありつけなかったんだろう?しかし、それなら私の事が判らなくても無理は無いな」
と納得した様に男が言った。

「だから、『おっさん』あんたは誰なのですか?お願いするので教えて下さい」
とギャレットは本当に知りたくてそう尋ねた。

「おほん、私か?そう、私は何を隠そうあの名高き、かの勇猛果敢と誉れの高い、他に類を見ないと諸国より謳われた」
「じゃ〜〜ん」
とギャレットは思わず茶々を入れた。

しかし、その男ギャレットを一瞥しただけで何も無かった様に続けた。
「アークティカ騎士団フェンリルナイツの団長、通り名を熱き心臓の守り手、アークティカの鉄壁のアーマー(鎧)『コルドバード』とは誰あろう、この私の事だ!!」
と言った途端に辺りは一瞬水を打った様になり、
それから一斉に
「おひよ〜〜っ、これは恐れ入ったぜえ」
「あんたが『あの有名な団長さん』かい」
「カッコイイ、いよっ大統領!」
と、やんやの喝采が起こった。

それをよそにコルドバードはギャレットに向かって
「お前には(もしかしたら)とてつもない剣技の才能がある(のかも知れん!)どうだ、お前のその腕をこのアークティカの為に使う気はないか?我が『フェンリルナイツ』に入団してみないか!給料も普通の兵騎士よりは(少しだけだが)『上』だぞ」
と勧誘を始めたのだった。
※()内の言葉は彼コルドバードの胸の内に仕舞われた言葉です。

ギャレットは一抹の不安(うさん臭さ)と今の流れでの見落とし(引っ掛かり)を感じたが、誉められて満更でもなく(そして給料の話にも大いに食指が動くのを感じ)つい
「俺に、やれるかな?」
と言ってしまったのだった。

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