Wild Arms 外伝 別離(わかれ)

-それぞれの道-『その2,ロディの章』

この曲は"むん様御製作"のワイルドMIDIです。"二次著作物"であり"無断転載は禁止"です。


(序章)
「ロディや…」
優しく呼ばれた気がして、ロディは半分覚醒しないまま起き上がった。
だが、我に返るといいようのない悲しみが押し寄せた。
ロディを育ててくれた恩ある人ゼペットは、もういない。

「何を心配しとるんじゃ。これしきの事…」
空元気を出しつつも、病を得てからは小さな体が益々小さくなり、
消え入りそうな錯覚を覚え、ロディはそんなゼペットから片時も目を離せ無かった。

しかし、ゼペットは
「この村の人が困っておるのだ。力になってやりなさい」と言った。
「そのためにお前の力はあるのだよ。素晴しい力が」
いつもそう言っていたゼペットであったのに、
ロディが村人の頼みで城下町へと行っている間に、ひっそりと冷たく
なっていたのだった。まるで眠っている様なその顔は今にも、
「何て顔をしとる。元気を出さんか。いい若い者が…」
と喋り出しそうだ。

村人の好意で村はずれの見晴しの良い場所へゼペットを埋葬する。
ここからなら、いつでも自分を見ていてくれそうな気がしたのだ。
世界中を巡る旅、
きっと、ゼペットは今頃空を飛んでいる事だろう。魂の鳥になって…
そしてこれから、これからどうするのだろう、一人きりで…、
ロディは旅暮ししか知らない…
ロディとゼペットの旅は漂泊の旅、正に放浪と言って良かった。
だが、行く先々子供と老人の2人連れは人々の同情を誘うものらしく、
親切にしてくれる人も少なくは無い。それがロディには嬉しかった。

だが今、現実は容赦なく襲いかかる。
一人でも生きて行かなくてはならないのだ。
いくら嘆き悲しんでも、大事な人はもう戻らない。
旅立ちの時は来ていた。

しかし#後ろ髪引かれる思い…、
もう少し、もう少しだけ、とロディは旅立ちを伸ばしていた。
はばたくには未知の世界は荒々しく、心の準備もまだ出来てはいなかった。

ロディの足は、自然と村長の家へと向っていた。
渡り鳥の依頼は、大抵が村や町の代表の長の元へ届くからだ。
それは、依頼者と渡り鳥との間のトラブルを防ぐ意味合いが強い。
そして何より、渡り鳥自身の個性によって、向き、不向きの仕事があるからだ。
代表はそれらをとりまとめてくれるのである。

ロディとゼペットは、旅の間渡り鳥の真似事をして生計を立てて来たのだ。
実際、ロディはこの村でも幾つか小さな仕事をしていた。

城下町への物資の運搬、荷の運び下ろし、薬草を見つける、迷子の家畜の探索、
この村唯一の特産品、怪鳥の卵の殻集め。
そして、みんなの税金を預かり城下町へと行く村長達の護衛、…

村長は気の毒そうな口調で言った。
「今ある仕事は、村はずれに最近出る様になった怪物退治と、
古代の遺跡附近で家畜が消えているので、その調査を頼まれている。だが、
どちらも君一人では少し難しすぎる仕事の様だ。あいにくだが頼める様なものは
今の所…」
ロディは落胆を隠せなかった。
そんなロディを不憫に思ったのだろう。
「2〜3日したら叉おいで。君にも出来そうな仕事を何か見付けておいてあげるよ」
と、村長が優しく言ってくれたのが唯一の慰めだった。

村長の家を出ようとしたロディは、勢い良く入って来た人物と
そのままの勢いでぶつかった。
その大男は吹っ飛ばされたロディをじろりと睨むと何事も無かったかの様に
ロディを全く無視して中へ入って行った。
聞くともなしに聞いていると、
「俺は渡り鳥のスパイスウッド、と言うもんだ」
という、身体に見合った大声が聞こえた。
「腕にはちょいと自信がある。仕事をくれ」
「おお、それは頼もしい。実は…」と、村長の声
そこまで聞いてロディは静かに外へ出た。

さて、どうしたものだろう。所持金も心許ない。
1日1食に切り詰めても、あと2泊できるかどうか…といった所だ。
途方にくれ、ロディは当ても無く歩き出した。
と、前から危なっかしい足取りの男がやって来た。

ロディがその男に気を取られたのは、
そう、その男が丁度ゼペットと年格好が似通っている様に思えたからなのだった。
そう思っていると、男の付く杖が"がくり"と変に曲がり、そのまま男は
前のめリに倒れた。
ロディは慌てて駆け寄る。
男の口からは「は…腹が…め…飯を、」という言葉がもれた。






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