のっぺら坊。顔無し。自分の顔を持たない存在。自分=心が無い人=自我を持たない=持つべき顔が無い人 |
一家惨殺。だが、何度も殺戮をくり返しているかも知れない。家族を包丁で刺し殺す他に、樹に吊るしたり、磔にしたりのイメージはそれを示唆していると思われる。 |
すべてを忘れくり返し続ける事こそ、まさに永遠と言う牢獄。どこに居ても結局この人にとっては牢獄以外のなにものでもなかったのである。しかし、それは自分の心を押し殺し感情を封じ込めたせいである。 |
親の言う通りに動く人形の様に生きて来たので、自主性に乏しく感情の起伏も無い。心とは自分なので、心を殺して自分が無いのは顔無しも同じである。よって、のっぺら坊とはお蝶の事だったのである。繰り返しから逃れたいと願い、薬売りに斬られた。 |
面・めん、はおもてとも読む。表面に出ている顔の事。表面的なものなど大したものでもない。それも自分の中のほんの一コマ。認識すればいくつもの自分がその表に現れ自分の面となるのだ。お蝶と面との関係は? |
母親に気に入られたいばかりに、良い子の仮面を被り演じ続け母親の見栄・自己満足の犠牲になった。母親の悲願のお家再興の為に、武家の後妻になるものの、馬鹿にされ、いびられ続けて我慢の限界を越えてしまい、義母・旦那・義弟・義妹を刺し殺した。 |
薬売りによって母親のエゴを見せつけられ、幼い頃の良い子にしなくてはならなかった気持ちを思い出し、そして母親は決して自分を見ようとしていなかった事に気付き、悲しさと怒りを覚え感情を爆発させる。 |
お蝶は今迄人の言いなりで自分がのっぺら坊=自分を持たずに生きて来た者、である事に気付いた。 |