第19話「罪も憎んで人憎む」
錠の家の棺桶は死人で埋まっていた。餓死や行き倒れである。その原因は飢饉。土地を捨てて逃げ出した百姓は無宿人となり、江戸へと出て来てのたれ死ぬのだ。と講釈を垂れる鉄。(二人の会話からは)鉄や錠も犬猫まで食べている模様。そこへ米屋の打ち壊しを知らせる半鐘が聞こえる。慌てて現場へ行こうとする二人。米を入れるもの、と言う事で死人を出して棺桶を持って行く錠。打ち壊しの現場には米と共に金を持ち出す一団があった。その頃、小判の改定を行い金の含有量を誤摩化す事によってぼろ儲けした老中秋山と金座の後藤は、儲けた分不足した金を増やす為に佐渡金山に人足を送り込みたい。そこで無宿人狩りを計画していた。打ち壊した米を炊き握り飯パーティをする観音長屋の住人達。そこへ主水が無宿人狩りを知らせに来るが、時遅く役人達に踏み込まれる。鉄と錠は長屋の連中を助ける為に、自ら無宿人だと名乗り出る。捕まった錠と鉄は拷問を受ける。そうして集められた無宿人達の中に、無口な男が居た。その何も語らない男と生国について口を閉ざす錠が再び引き出される。その際に主水は錠に「老中の秋山と金座の後藤をどうにかしない限り、無宿人狩りは終らない」と告げる。主水はその場にいた金座の後藤の態度から無口な男は後藤の関係者では無いかと睨む。調べると後藤には士農工商を否定する思想犯であり、秋山に敵対する星野の一派である勘当した息子がいる事を突き止める。無宿人狩りを止めさせる為に息子の事で後藤と秋山に取引を求める主水だったが、知らんと突っぱねられる。交渉決裂し帰り際、主水はその場の様子を伺っている者がいるのを暴き立ち去る。それを見て息子の精一郎を始末しようと話し合う二人。主水は縁の下に潜り込みその会話を聞く。と、その場におきんがやって来て金座の小判師=金の割合を調合する人、が金を持ち逃げし獄門になったと聞き込んで来る。その小判師為三の娘は、父親は捕まったがその後全く金の行方は探されなかったので罪を着せられただけなのではないかと言う。なぜなら小判の混ぜ物の配合は為三しか知らないからだ。主水は精一郎を締め上げて真相を吐かせると息巻く。夜、鉄と錠と精一郎を引き出す主水。小判師の不審死を問いつめる。しかしそこへ無宿人達を直ちに島送りにしろと老中秋山からの早馬でのお達しがあり、無宿人達は連れ出される。おきんの姿を見た主水はこっそり隊列から抜け「隙を見て鉄と錠を逃がす」と言う。おきんは驚き止めるが、主水は奉行所を止めて逃げると言う覚悟を見せる。だが、主水が行動を起こす前に精一郎を奪回しに来た一味に襲われ、そのどさくさに紛れて主水は錠と鉄を逃がす。精一郎は星野一派の仲間と共に逃げ出すが、身分制の無い世界を作るのは建前で、本当は秋山に星野が取って代わり皆も権力の座に就きたいだけなのを知り失望する。そして、秋山達を打倒した後で精一郎が金座の役に就く様に説得され、それを拒否している所に秋山の息の掛かった者達が皆殺しに来た。鉄と錠は傷付いた精一郎を逃がし、主水はその場に踏みとどまり戦う。精一郎は小判師の娘おそのの元に連れて行ってもらい、為三は生きていると告白する。そして金座のからくり、お上に渡す小判と市中に出回る小判は金の含有率が違い、その差額で儲けていたと言う事と為三の居場所を言い精一郎は事切れる。佐渡へ行きたく無い鉄と娘に頼まれた錠は秋山を殺ると決めた。後藤家の蔵に忍び込み今まさに始末されようとしていた為三を助ける。そして鉄は後藤、錠は秋山をそれぞれ仕置するのだった。
ツボったみどころ。仲間の為に全てを投げ打とうとする主水カコイー。
第20話「狙う女を暗が裂く」
小料理屋の廊下で女を出刃包丁で刺し殺す男。座敷に居た三人の商人達にも襲い掛かる。二人を刺し殺し、一人に逃げられる。翌朝、岡っ引き二人の死体が発見され、昨夜のお座敷殺人事件の犯人寅吉が五人も殺したのだ。人々がその現場を見ながら寅吉じゃねえ、鬼寅だと口々に言うのを聞く鉄。おきんは観音長屋の錠の元に行き、鬼寅が近くに潜んでいるらしくて怖いので一緒に夜を過ごそう(下心あり)と言うが一蹴される。そこへ鉄が戻って来るが、寅吉探索の町方役人も長屋に踏み込んで来る。おきんも家捜しされ散々な目に会うが、そこへ本当に寅吉が現われる。一方、一人生き残った商人の板倉屋はなぜ命を狙われたのかさっぱり判らず、それ故に怯え寅吉捕縛に懸賞金を出す事にする。懸賞金の事をおきんに知らせに行く鉄。見つけた者に五両、捕まえた者に三十両くれると言う。中に寅吉がいるとも知らず、鉄は帰って行った。が、おきんの受け答えに何か引っ掛かりを感じた鉄は再びおきんの家に行き,中に寅吉が居るのを知る。鉄は錠にその事を知らせ、二人でおきんの家に忍び込む。その頃傷を負った寅吉の手当をし、また寅吉が同郷と言う事でおきんは寅吉と意気投合していた。そこへ鉄と錠は踏み込む。鉄は事情によっては逃がしてやると持ちかけるが、拒む寅吉。しかし、おきんの説得もあり、重い口を開く寅吉。一年前、柳橋で板前をしていた寅吉は三人の大店の主人達から座敷に呼ばれる。その座敷で自分を引き立てる事を言ってくれた芸者に心惹かれ、関係を持つ。芸者と一緒になりたい一心で五百両の身請け金を作るべく、寅吉は上方へと稼ぎに出掛ける。そうして金策の目処を付けて帰って来た寅吉は芸者の蝶丸が座敷に出ている=誰にも身請けされていない、のを知り自分を待っていてくれたものと思い込む。しかし、蝶丸は五百両の話は出鱈目で三人の旦那達が寅吉を本気にさせられるかどうか百両の賭けをしていただけだ、と寅吉を弄んでいた事を告白する。その話を外で岡っ引きも聞いており、おきんの家は捕り方に囲まれる。寅吉は優しくしてくれたおきんにせめて自分が中に居ると告げて懸賞金を受け取って欲しいと言う。そうしておきんと押し問答をしている所に町方が踏み込んで来た為に、寅吉はおきんを縦に取る。しかし、女もろとも斬り捨てろの言葉におきんを突き飛ばし自ら斬られる寅吉。おきんは泣きながら懸賞金を請求する。錠と鉄はその金を仕置き料にし寅吉を始末して安心し切っている板倉屋に忍び込む。用心棒達を錠が、そして相変わらず殺される訳が判らない板倉屋に「何者だ?」と問われ「鬼寅だ」と答えて鉄は板倉屋の首を外すのだった。
ツボったみどころ。男の純情を弄ぶと怖い、と言うか真面目の生一本みたいな人間には絶対に冗談は通じない。そして人の心を踏みにじる者はその事をすぐ忘れるが=悪事なので自衛本能、自分が悪人であると認めたく無いからね、された方はいつまでもいつまでも忘れないのである=それを許す許さないは別問題、『忘れられない』と言う事。
第21話「生木を裂かれ生地獄」

ツボったみどころ。。
第22話「楽あれば苦あり親はなし」
奉行所から出て来た主水にいきなり「あなたの子よ」と赤ん坊を渡す女。それを見たのか鉄の元へおきんが知らせに来る。一年前に関係したのは認めるが、自分の子供であると言うのが信じられない主水。しかし、子供を抱いて満更でもないが女=お波が所帯を持とうと小判三十両を出して計算し出したので主水は我に返り慌てる。実は独身だと偽っていたが自分は妻帯者であると告白する。それに対し騙された、奥さんにバラすと怒り出した。だが、お波はその後別の商人の番頭らしき男の元へ行き「あなたの子よ」と始めるが物凄い勢いで追い返される。それを見ていた鉄と主水。酒場で語り合う。「堅気ではないので何人の男と関係があるか判らない」と言う鉄。主水は事情に詳しいのでお波との関係を怪しむが否定する鉄。主水はお波と子供は番頭の清兵衛に押し付けようとするが、清兵衛は反対に主水がお波と関係があったのを見ており、上役に話すと脅す。その頃、ヤクザの親分=藤造がお波に子供が出来た事を知り、お波と関係のあった男を許せず(自分からお波を捨てたにも関わらず)手下に調べさせ、役人である主水のみ抜かして始末させるのだった。次々にお波と関係のあった男達は殺されて行き、その現場を見たお波も捕まりそうになるが、おきんに助けられる。鉄は患者を装った藤造の手下に襲われるが逃げ出す。小料理屋で飯を食べる主水の元に鉄がやって来る。襲われた事に心当たりを聞く鉄に主水は清兵衛が殺されたと告げる。主水の話に次々とお波と関係のあった男達が始末されているのに気付く鉄。そこで襲われた鉄もお波と関係があったとようやく気付く主水。鉄は盗賊の元締めのヤクザ野分けの藤造の仕業ではないか?と思う。実はお波はヤクザの親分の囲われものであった時期があり、その後に妊娠した事から子供は藤造の子だと気付く。二人が話していると、おきんとお波が小料理屋に戻って来た。主水は潜伏先だと知ってお波を待っていたのだ。藤造の子だと認めるお波。しかし、父親の様にヤクザにはしたくないと言う。その小料理屋が藤造の手下に知られるが、主水はお波を逃がす。藤造はお波を囲っていた頃にお波の世話をさせていた老女を呼び出しお波の子が藤造の子に間違いないと確認する。主水は藤造の息の掛かった上役から藤造に子供を渡す様に迫られる。仕方なく藤造と会談する主水。そこで藤造は以前おまきと言う女と子供を作ったが、自分に子種が少ないので自分の子かどうか判らなくなり殺してしまったと告白する。そしてお波を妻にし、子供は堅気に育てると誓う。そして清兵衛殺しの下手人を引き渡すと取引を持ちかける。断れなくなった主水はお波を説得する。しかし、お波は藤造の以前の子供の子守り女をしていたが、浮気を疑った藤造におまきが殺され、それを止めに入った子供も藤造の手で殺されたのだと語る。だが、清兵衛の様な死人が出続けると主水が言うとお波は藤造の元に戻って行った。最初こそ可愛がるそぶりを見せる藤造だったが、また自分の子か疑心暗鬼に駆られる。その異変を敏感に感じ取ったお波は夜中子供を連れて逃げようとするが、藤造に見つかり子供共々斬られてしまう。お波は観音長屋へやって来て、三十両を鉄に渡し、「本当はあなたの子だった。だから仇を取って」と頼み事切れる。「俺の子だから仇は取ってやる」と約束する鉄。藤造は子供の墓の前で号泣する。その姿を冷ややかに見る鉄・主水・おきん。藤造の家の縁の下に潜り込む主水。床下より藤造の手下二名を串刺しにする。鉄は天井裏から舞い降り藤造の喉と急所(また新しい女に手を出そうとしていた)を突いて仕置きする。
ツボったみどころ。錠は出なかったけどその分主水と鉄の食えない掛け合いが見れた。赤ん坊は勿論主水でも鉄の子でもないだろう。藤造の子だと思ったら実の親に殺された子供が不憫すぎるもんなあ。鉄もそれが判ってたんだろう。藤造はDV男の気狂い版だしねw


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