第15話「夜がキバむく一つ宿」
藩の財政を建て直したと勘定奉行から報償をもらい表彰される侍。その様子を天井裏から見ている鉄と錠。その侍が甲州屋の娘を騙し、藩の二万両の負債証文を盗み出させて甲州屋を倒産させ、それを苦にした娘が身投げしたのを恨んだ甲州屋から仕置の依頼を受けたのだ。錠が床下に忍び込み畳の下から侍を突き刺す。鉄はその隙に同じ穴の狢だった奉行を仕置きし、錠が更に止めの仕置きに現われる。半次はこの一件を瓦版に書きたくて仕方が無いが、「書いて良い事と悪い事がある」と主水に怒られてお蔵入りとなる。鉄と錠は出張仕置だった様で大雨に難儀しながら江戸に向かっていた。が、鳥追いの女に雨の為に通行止めになったと教えられる。仕方なく廃屋で雨宿りしようとする2人。中には4人の先客がいた。飛脚に旅の雲水に職人の老人と百姓である。そこへ追われていると男が入って来た。その次に病気らしい侍とその妹、薬売りも入って来た。追われている男は薬売りが悪い奴だと鉄に訴える。鉄は錠に話せ、と突き放す。錠に張り付く男、錠のすぐ隣で寝たりしている。坊主と先程の鳥追いの女が密会し、隠密に奪われた隠し田畑の存在を記した書き付けの奪還を相談していた。隠密の正体を暴く為に、雨宿りの連中で隙を見せた者から殺して行こうと言う。残ったのが隠密という理論らしい。最初は鍋を探しに外に出た山芋掘りに来た百姓が鳥追いに殺された。外に出たまま戻らない百姓の死体を見つけ集まる一同。追われている男が薬売りの仕業ではないかと言い、薬売りと言い争いになる。飛脚はこんな所にいられないと雨の中飛び出すが、やはり女に刺し殺される。そしてあの追われている男が、雲水に襲われ男は百両で命乞いをするが外に出た所を女に殺される。一同の元に鳥追いの女が飛脚が死んでいると言って家の中に入って来る。そこへ雲水が戻って来るが追われている男が一緒ではないので皆は探しに行く。雲水と組んで探していた老職人は雲水に殺される。女の悲鳴が聞こえ、一同が家に戻ると鳥追いの女が腕を怪我しており、何者かに襲われたと言う。雲水が一人で戻ったのを見た鉄は老職人の心配をし、探しに行くと老人は今際の際で、鉄は会いに行くはずの初孫の名前の言伝と恨みを晴らす仕置き料を頼まれる。鉄は錠に坊主と鳥追いが自分達をも狙っているので単独行動しようという。坊主が鍋の中に何かを入れるのを目撃する錠と鉄。錠は薬屋を誘い出し、鉄は残った雲水と鳥追いの会話を盗み聞く。錠は薬屋に自分の腕を買わないかと持ちかける。鳥追い女は鉄に色仕掛けで迫る。錠は鍋の中身を毒味してみろと雲水に迫る。坊主は薬屋を刺すが、錠に仕置きされる。薬屋は錠に百両で江戸に届け物をして欲しいと言い事切れる。鉄は女が誘惑しながら自分を殺そうとするのを察知しており、返り討ちにする。薬屋=隠密の隠し持っていた書き付けを持ち去ろうとする鉄と錠。しかし、病気の侍が奉行殺しの犯人と書き付けを取り戻す事で手柄を得ようとして襲って来る。妹=実は情婦、が止めようとして斬られる。侍の腕をバキバキに外し動きを封じる鉄。錠が侍に止めを差す。妹に淡い恋心を抱いていた錠は泣き崩れるのだった。
ツボった見どころ。追われている男は「順ちゃ〜ん」でお馴染みの玉助おじさんだ。添い寝シーンで思わず「錠逃げて〜」
第16話「大悪党のニセ涙」
火祭りの夜ひょっとこの面をつけた男が人殺しをする。捕り方に捕まった男は、拷問されても犯行を否認する。酒に酔って神社で寝ていただけだ、と言う。しかし神社で面を付けている所や、頼母子講で百五十両を被害者の三国屋が持っていたのを知っていた事や、犯人が逃げ込んだ神社に居て捕り方を見た途端に逃げ出した事など、状況証拠は怪しいものだった。しかし、男仙八は自分は無実で潔白の身であるし、病弱な母親が心配で堪らないので様子を見に外に出たい、と涙ながらに牢名主の天神の小六に訴える。その様子に心を動かされた小六は主水に相談する。しかし、「外に出す事は出来ないと断った」と錠と鉄に話す主水。やった証拠もやらなかった証拠も無いので仕方が無いと言う。凶器に使われたドスが見つからない事と、仙八の着物に血が付いていない事で主水も迷っていた。(手には血が付いていたらしい)。牢内では小六が主水の入れ知恵により、囚人達に桶を壊して棒を作り、布団を解して綿を取り出し火付け道具を作らせる。仙八の病気の母の元を訪ねる鉄と半次。万造という仙八の弟と入れ替わりに金を置いて帰る鉄達。夜中火事だとりつに起こされる主水。慌てて牢へと向かう。牢内では囚人達が、飛んで来る火の粉を火付け道具に受けて牢内に火付けする。役人は三日後に寺に集まる様に言い、囚人達を解き放つ。その囚人達に仙八の居所を聞き回る男達。当の仙八は墓地で瓶を掘り出していた。その様子を伺う小六。男達に自宅が見張られているのを知り、馴染みの女の元に身を寄せる仙八。弟分の万造が金を持ち逃げしたと言う。女は、万造と仙八の母親が引っ越したらしいのは知っていたが、その行き先までは知らないと言う。小六は主水達のアジトに行き、上州屋の子分が博打の借金百五十両を取り立てる為に仙八を探し、仙八は弟分の万造を探している、と言う。怪しい状況ながらも、母親に会いたいと言った涙を信じたい小六。しかし、万が一嘘だったら自分の手で始末するとも言う。そこへ小六の手下が万造の居所を突き止めて来た。仙八の母親の世話をする万造夫婦。そこへ荒れ狂った仙八がやって来て、母親に三国屋殺しは自分だと告白する。そして外へ出たかったのは母親の為ではなく、隠した金が心配だったからだと言う。そして俺にかかれば小六もちょろいもんだと威張る仙八。それを丁度家の外で聞く鉄、錠、小六。万造は仙八の金で仙八の母親の身体に良い環境に引っ越し医者に見せたかった、そして自分も新しい商売が始めたかったのだと言う。が、仙八は聞く耳を持たず、万造を叩きのめす。堪らずに女房が、ドスと血塗れの手ぬぐいとひょっとこの面と金が入った包みを差し出す。金を見て狂喜する仙八と、その浅ましさに泣き崩れる母親。錠は中に飛び込んで行こうとするが、小六は「手を出すな、俺がやると言ったはずだ」と制止する。その夜酒を飲み仙八は万造をドスで脅し、女房を手込めにする。囚人の集合する寺の境内で主水と小六は仙八の帰りを待っていた。「罪一等を減ぜられるので必ず戻るはずだ」という小六。仙八は上州屋の手下に追われていた。刻限の鐘の音がしても戻らぬ仙八に「恩を仇で返された」と言う小六は怒りが収まらず、鉄達に百両で仙八の仕置きを依頼する。そこへ追われつつ仙八が戻って来る。他の囚人達と共に階段を駆け上がり、寺の境内に入る仙八を見つけた小六は襲いかかろうとするが、主水に人目があるから駄目だと止められる。鉄は堂内に忍び込み、点呼中の囚人達に忍び寄り、後ろから仙八の背骨を折る。仙八の名前が呼ばれるが、小六は役人に「仙八は急死しました」と告げるのだった。
ツボった見どころ。情に弱い天神の小六だが、裏切り発覚時に仕置きすればいいのに。そこが情に弱くても極道者の所以か。それと都合良く火事が牢の近くで起こったのは、主水が放火の指示をゲフンゲフン。
第17話「恋情すてて死の願い」
油問屋の但馬屋が付け火で出火する。しかし但馬屋の主人が自ら放火したと罪を着せられ火あぶりとなる。無実を訴える悲痛な声を聞きながらやじ馬の整理をする主水。五年後、鉄と錠は仕事帰りに主水と出会う。主水は油問屋ばかりに盗みに入る泥棒の探索に見回りをしていたのだ。怪しい気配を察知する主水。逃げて行く2人組に小刀を投げて手傷を負わせ錠が一人を捕らえる。アジトに連れ込み殺すと言う主水。しかし、女と判り錠も鉄もやる気が無い。主水も躊躇いを見せるが、女の顔に見覚えがあるのに気付き五年前の処刑場面を思い出す。怪我をしている女に優しく世話をする錠。それに心を動かされたのか盗みの訳を打ち明け出す。もう1人の泥棒、妹のお鈴は自宅の飯屋で姉の帰りを待ちつつ夫婦約束をした百姓作次郎に結婚をせがまれていた。何とか言いくるめて作次郎を帰すお鈴の元に入れ違いに棺桶を背負った錠が現われる。そして棺桶の中から姉が出て来る。主水は五年前の調書を読んでいたが、それを与力の長尾に見られる。主水は錠の元に女の身元が割れたと言いに来たが、錠は既に知っているし女は自宅に送り届けたと言う。姉のお美弥は但馬屋の元手代で今は上総屋という店を持つ清七から、今夜五年前の油買い占めの念書を処分に、油問屋達が根岸の堺屋の寮に集まると知らせる。その念書は今まで奉行所の長尾に預けていたのだと言う。鉄・錠・おきん・主水はアジトに集まりそうめんをすすりながら、今までに判った事を話す。念書など悪事の証拠を残しておくはずがない、というのが主水と鉄の意見であった。お美弥は妹のお鈴に、1人で念書を奪いに行ってくれと頼む。しかし、お鈴はお互いに好きな相手、清七と作次郎と夫婦になって幸せになった方が良いのではないか?と言う。しかし、五年前の父の無念の処刑の様子や、母が後追い自殺した事を忘れてはならないと言い聞かせる。それでも作次郎と幸せになりたいと家を飛び出すお鈴。その経緯を見ていた錠。家を飛び出したお鈴は、作次郎に今日から自分の家で暮らそうと言われるが、やはり姉を放って置けず堺屋に忍び込む。錠も同じく堺屋の寮の天井裏に忍び込む。与力の長尾が念書を出し金を受け取ろうとした瞬間、お鈴が天井から飛び降り念書を奪うが、側に待機していた用心棒達に斬られる。お鈴の盗んだ念書は偽物で、本物は長尾が持っていた。油断している長尾から念書を奪う錠。その場から逃げ出し、川縁で事切れているお鈴を見付け運び去る錠。「あんな念書がどれ程大事なんだ」と棺桶を埋めながら憤懣やるかたない錠は「妹の幸せを奪った事を忘れるな」と言う。そして「妹は罠にかかったんだ。その情報をくれた奴が怪しい」と言う。しかし、お美弥は上総屋の清七はそんな事をするはずないと否定する。黙って念書を渡して去る錠。飯屋を訪ねて来る作次郎。戸を叩き、お鈴の名を呼び続ける。錠は清七の後を付け回す。清七は堺屋に念書を千両で買えと迫る。清七と長尾がグルだった。それを屋根の上に上がり様子を伺っていた錠が知る。しかも、清七が付け火の下手人であると言う証文を出す堺屋。だが、怯まない清七。自分が捕まったら油問屋の旦那達を道連れにすると脅迫する。そして金を出せばお美弥に念書を持って奉行所に行かせ、長尾に握りつぶしてもらうという計画を話す。錠からその話を聞き、火付けの証文と念書があれば、自分が直に奉行に直訴すると言う主水。おきんは堺屋の部屋を荒らす。それを見た堺屋は慌てて証文を隠し場所から出して確認するが、錠に奪われる。錠は証文を持ってお美弥の元に行くが、お美弥は清七の元に居た。錠は奉行所の前で主水と落ち合うが、一足遅かったと言う主水。一日中奉行所の前で錠はお美弥を待っていたが、上総屋に付き添われて裏口から入ったとの事だった。長尾によってその場で極刑に処せられたのだ。アジトに戻るとお美弥から念書のお礼にと書かれた手紙と金が置かれていた。錠はそれを仕置料にする。堺屋の使いのフリをし、橋の下で長尾と念書と金を交換する主水。そうして長尾を油断させ、鉄と共に仕置きする。清七は錠が滅多刺しにして仕置きする。
ツボッた見どころ。どうやら錠は保護欲を掻き立てるタイプの女に弱い様だ。放っとけないと言う感じである。その証拠にシャキシャキしたおきんには目もくれないのであった。
第18話「備えはできた いざ仕置」
般若の面を付けた侍に小刀で脅された上に嫁入り前の身体を奪われ、恐怖と屈辱で発狂する娘。主水は奉行所で家出人の担当にさせられ、知り合いの家に出掛けたまま戻らぬ娘お里を探して欲しい、と言う父親と大工の許嫁の訴えを聞く。おきんが鉄の元に主水からの手紙を持って来る。ハンモックで寛ぐ鉄。手紙の内容は人探しだ。鉄は早速おさとの家に行き、手紙に書かれたおさとの特徴を言い当てた様に装い、怪し気な祈祷を行い小銭を稼ぐ。その帰り道、昨夜半次と錠が河原で見つけた正体不明になった女を連れて来たのを思い出す。錠の元に駆けつけ女の首筋に特徴的なほくろがあるのを確かめおさとだと知る。鉄と主水はどのように許嫁と再会させればお礼が多く貰えるか、を相談していたがお里の様子がおかしく、気が触れているらしいのに気付き知らせるのを躊躇する。しかし、お里を探し回る許嫁佐吉がお里を見つけるが,変わり果てた姿に呆然とする。お里の気が狂った原因について考える鉄は、佐吉に引き取られたお里の様子を見に行く。お里の手足に縛られて鬱血した痕を見つける。お里が訪ねたはずの丸岡の隠居の所にしつこく聞き込みに行く佐吉。鉄はどうにかお里を元に戻してやりたいと、頭のツボをマッサージしつつ行方不明の間の事を尋ねるが反応はない。だが、外から謡いが聞こえて来ると突然恐怖に怯えた様子を見せ、般若がと叫び、そして十兵衛と呟く。そして手足を縛られ小刀で脅された体験を語り出す。主水に十兵衛についての心当たりを尋ねる鉄。腕が立って能の謡えるという特徴に、主水は一人だけ心当たりがあった。名門の旗本、加納十兵衛である。主水と立ち会った事があり、互角の腕を持っていた。佐吉は丸岡の隠居がどうしても怪しいと思い、縁の下に忍び込んでいた。そして橘屋に別宅に呼ばれて出掛ける隠居の後を追うのだった。しかし、隠居は殺され、真相に気付いて飛び出した佐吉も刺される。瀕死の状態でお里の元に戻った佐吉は、橘屋を忘れるなと言い残して死ぬ。橘屋と聞き雷の音と共に気を取り直し我に返るお里。だが、目の前には佐吉の死体が。橘屋と加納がつるんでいるので、主水は上役から佐吉殺しの下手人探索の打ち切りを命じられる。半次が加納が般若の面を被り、娘をいたぶって手元を狂わせ小刀で刺し殺すのを見届けてアジトに戻る。鉄はお里から佐吉と所帯を持つ為に貯めた金を貰ったと仕置料を置く。相手が大物なので主水は一計を案じ、おきんに狂女のフリをさせ十兵衛に付きまとわせる。そして夜毎に鉄が寝所に忍び込み、十兵衛にお里が妊娠してその子供が殺しに来る、お前は廃嫡されると散々不吉な暗示をかける。そうして精神的に追い詰められて行く十兵衛。ついに奥方を斬り殺し出奔する。主水達奉行所の同心達は、上役から十兵衛が乱心したので、見つけた時に抵抗されたら斬り捨てても良いと言われる。主水は十兵衛を見付け立ち会う。小刀に苦戦するが、十兵衛を斬り捨てる。鉄と錠は橘屋の別宅へ向かい、そこにいた橘屋と手代達を仕置きする。
ツボッた見どころ。狂女役のおきんの真似をして「じゅう〜べえ〜」と言う半次の物まねが笑える。


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