第7話「閉じたまなこに深い渕」
清原検校(注釈:検校とは盲人の取得出来る官位の最高職。73の階級制で技能を取得して行く程に位が上がるのだが、早期取得のため地位を金品で売買する様になった。=この辺は相撲の年寄り株みたいなもんだと思ってもらえば良い。その為に幕府より高利貸しを認められていた。)を仇と襲いかかる新内流し(注釈: 三味線の一流派の名人新内の節を受け継いで歌う街頭芸人)の女がいた。中村主水は女を取り押さえる。翌日奉行より主水は呼び出され女を検校に引き渡す様に言われる。咄嗟に「女は逃げた」と主水は言ったのだが、「今日中に見つけなければ首! 」を宣告されてしまう。奉行は検校に奉行職に就く為の運動資金を借りていたので、検校の言いなりになっていたのだ。しぶしぶ錠の元にいる女を訪ねる主水。女=お糸は名古屋の薬問屋の娘で三年前、父が死んだため生まれながらの盲目の兄が検校の位を買う為に京の街へと下男のベンゾウと母親と共に同行していた。その道中、下男は母親を刺殺し、兄も刺されながらも女を逃がそうとしたが女は崖下に転落。だが命を取り留め、噂を頼りに下男の行方を追って江戸まで出て来ていたのだった。そして昨夜下男にそっくりの男を見つけたのだが、清原検校は生まれつきの盲人の目に見え人違いかも知れないと思い大人しく主水に引き立てられて行く。その時に兄と母の為に念仏をと三両を置いて行く。それを釈然としない気持ちで見送る仕置人の面々。独自に検校の目が本当に盲目かを調べ始める。まず鉄がにせ盲を装い検校の寝所に忍び込む。が見つかって目を確認するも判らず。次におひろめの半次が瓦版にお糸から聞いた話を書き、清原検校の正体としてばらまくが、検校がそれを人に読んでもらっている様子を見て盲目かも知れないと思う。おきんは検校に金を借りに行く。おきんの顔を手で確かめ十両を貸す検校。錠が彼らの話を聞いて「お糸が浮かばれねえ」とキレる。最後に錠が直接棺桶を担いで検校屋敷に乗り込み「お手打ちになった女の死骸を引き取りに」行くが追い返される。錠は主水の元に行き「お糸はまだ生きている。何とか助ける方法を」と相談する。お糸は人違いと思い込んでいたために手打ちにされず、土蔵に閉じ込められていた。そこへ半次・鉄・錠の三人が屋敷に忍び込みお糸を助け出す。再び主水の元に奉行を介して検校から女を探せとの命令が下る。だが、お糸は居所=鉄の家、を知られ刺されてしまう。検校は自分の秘密を知る側女を殺し、代わりに借金の形としておきんを連れて行く。鯉の鱗を目に入れて盲目を装っていたのを知ったおきんは、お糸の仇を取りに検校屋敷に忍び込んだ半次・鉄・錠に検校が目空きであるのを告げた。錠が検校の側近達を鉄が検校を始末。お糸の三味線の撥を使って検校に止めを刺す。主水は何もしていないにも関わらず仕置料を貰う=おきんが検校から借りた十両÷5人=2両。
ツボったみどころ。仕置人がそれぞれに見せる調査方法。と何もしないでウマーな主水。
第8話「力をかわす露の草」
昼寝をしていた犬に水をかけた為に屋敷の奥方から折檻され、大男に何度も水の中に投げつけられ、結婚前にも関わらず顔に傷を負わされる女中『おみつ』。次に犬=美鈴と言う名の朕ころwの世話を任される『しの』。しかし、そのしのも犬を逃がしてしまうという失敗をやらかしてしまい、おわびに首を括ろうとした所を鉄に救われ馴染みの船宿に匿われる。実は犬は将軍の愛妾『おまき』が自分の妹おみつに与えた犬で、その妹というのが屋敷の奥方である『ぬい』なのだった。子供を産めないぬいが、犬を子供のように可愛がっていたのだった。その夫である若年寄の内藤が、奉行に頼み主水達町方が犬の探索に駆り出される。適当に手を抜く主水に鉄が女中を救ったと話す。奥方はしのの父親佐助の元を訪ね、娘の居所を聞き出す為佐助に乱暴を働こうとする。そこを観音長屋の人間達(半次・おきん・錠を含む)が止めようとするが大男に投げ飛ばされる。錠が大男に立ち向かうが、奥方に銃を発砲され肩に傷を負い、そこを大男にメタメタにされる。おきんは錠の敵討ちの為に十五両で仕置に掛けようとする。が、主水と鉄はそれを断る。発砲騒ぎを旦那に咎められたにも関わらず、誰のお陰で出世出来たのか?と開き直り逆切れする奥方ぬい。怒りが収まらず姉の元へと家を出る。その後を付ける半次とおきん。だが、大男に見つかり2人とも投げ飛ばされる。船宿を追い出されるおしのは父親の元へ戻っていた。鉄は2人に逃げる様に説得する。そこを目明かしの文吉に聞かれ内藤屋敷に通報される。鉄は船で2人を送り逃がすが、追っ手によって父親は殺され鉄も大男に襲われる。鉄は反撃するが、大男が大き過ぎて鉄の得意技である骨外しが効かない。屋敷の土蔵に連れ込まれ拷問される鉄。鉄は自力で(身体の骨を外して縄抜けや格子潜り)屋敷を脱出する。しのは養父の元に逃げていた。鉄はしのの養父=おみつの実父でもある、から100両で仕置きを請け負う。おきんと半次が守衛を引きつけている間に鉄と錠が屋敷に潜入。鉄が新しい犬を連れ出し探しに来た大男を錠と鉄の2人掛かりで襲いかかり鉄が首の骨を外して仕留める。異変に気付き銃を持ち出した奥方を錠が仕留める。曲者を追い掛け外に出ようとした家中の追っ手を主水が「銃声は何事か?」と聞くのに、屋敷の主人が「町方の出る幕ではない」と問答無用で追い返す。その隙に錠と鉄は逃げるのに成功するのだった。
ツボったみどころ。若き日の柳生博が女房に頭の上がらない若年寄役で出ている。
第9話「利用する奴される奴」
吉原で因縁をつけ金を巻き上げる侍を仕置する鉄。それを侍の接待をしていた花魁に見られる。が、侍の持っていた金を渡し口止めする。その後主水から(吉原の旦那衆から主水が何とかしてくれと頼まれた模様)仕置料五両をもらう。それから一ヶ月後、すっかり金を使い果たしおきんに金を借りる鉄。その金で早速半次と岡場所に遊びに行く。そこに殺しを見られた女が居て、呼び止められた鉄はその女『お順』の馴染みとなり、次第にのめり込む。主水からも借金して女につぎ込む鉄だったが、お順を食事に誘いに来て他の男と抱擁し金を渡しているのを目撃してしまう。意気消沈する鉄だったが、おきんに借金を返すため托鉢に出た先でお順の男に出会う。ならず者を従えて街中を練り歩くその姿を見て、鉄は後を付ける。その男『清造』の正体は女を騙して風俗店で働かせる女衒だった。嫌気が差して足抜けしようとした女を折檻させて自分が介抱し女を言いくるめるやり口と、気に入った女には簪を母、妹などの親族の「形見だ」と言って渡して気を引くという手口を見た鉄。半次が調べただけでもそんな女が15〜16人いると言う。半次は仕置に掛けようと言うが、鉄は渋る。そこでおきんと半次はお順に清造の正体を明かす代わりに金を毟ろうとする。しかし、お順は相手にしない。「どうせ鉄の差し金だろう」とせせら笑うお順にカッとなったおきんの、「清造の家には女房気取りの女が住んでいる」と言うのを聞きお順は清造の家へと向かう。そこには女が居て甲斐甲斐しく飯の仕度をしていたが、清造が外食をしようと誘い出掛けて行った。その後を追うお順。すると清造は女に「お前は江戸で働くには年を取り過ぎたので銚子で働け」と言う。「やっと年季が開けたのだから嫌だ」と女が拒否すると、清造はあっさり女を捨てる。清造と一緒になるのを夢見ていた女は騙されていた事に逆上し、貰った簪で清造に襲いかかるが、反対に帯で首を吊らされてしまうのだった。お順は鉄の元に向かい、清造を殺してくれと頼む。しかし、主水は奥さんのりつと大山詣でに行くので断り、錠と半次も乗り気ではない。お順はおきんの所にいたが「むかし自分が病気になった時に清造と一緒に暮らしたことがあり、優しくて良い人だった」とおきんに語り意気消沈する。そして錠とおきんの会話で鉄がヤル(殺る)と言うのを聞いてやはり清造のことが忘れられず、清造の元へと知らせに駆けつける。そ んなお順を清造は空井戸に投げ落す。そして殺し屋対策にと助っ人を頼む。鉄と半次は清造を殺しに行く途中、錠からお順が清造に知らせに行ったと聞く。半次はお順の店の者を装い清造達を外に連れ出す。ヤクザが4人待ち伏せていたが清造とその仲間合わせて八人を鉄と錠とで半分づつ倒した。鉄は清造の急所を潰した上で仕置きするのだった。その後、お順を探して清造の家の空井戸に降りて行く鉄。しかし、お順は鉄の腕の中で最期まで清造の名を口にするのだった。翌日大山詣での主水りつ夫妻の前を棺桶を担いだ錠と半次が通り過ぎる。それを追い掛け事情を聞く主水。鉄は「女郎が一人死んだだけだ」と言うのだった。
ツボったみどころ。津川雅彦の鷲鼻は見事だ。女に対する冷たさと優しさの使い分けが絶妙、DV男の典型だ。
第10話 「ぬの地ぬす人ぬれば色」
大奥の将軍の側室が外出先で反物を気に入り手に入れようとするが、それを作る老職人が娘の婚礼衣装だからと断る。しかし、側用人の侍が無理矢理持って行こうとする。それを取りすがり止めようとする老職人が斬られ、娘の婿の職人も斬られる。娘は奉行所に訴え出るが相手にされない。しかも、あの側室お美代の方は天涯孤独となった娘雪を哀れに思い大奥に召し抱えようと言う。その話に裏があると睨んだ主水は仲間に事情を話す。するとおきんが雪の元に赴き、大奥に行くのを止める様に言うが、雪の決心は固くおきんは付き人として大奥に付いて行く事にする。しかし、大奥の入り口にあの仇の侍が居るのを見て驚き怯える雪。そして側室がそれを仕組んだとほのめかすのを聞いて、やっと自分をいたぶる為に大奥に呼んだのだと気付き泣き崩れる。不安になった雪はおきんに店を売った金を預ける。その頃、主水達はなんとか大奥に入る手立てを考えていた。大奥に住み込みで働ける、大奥の女中達の用事を足す下男を取り仕切る男に顔が利く主水は半次を大奥に送り込む事に成功する。側室のお美代の方は雪に大奥の廊下を全部磨かせると言い出す。その為に床を磨く糠袋を作れと差し出したのはあの友禅の反物であった。お美代の方は友禅で雑巾を作らせていた。あまりの事に友禅を抱え大奥を逃げようとする雪は、偶然将軍と出会う。将軍は雪を気に入り伽をさせようとする。それを聞いたお美代の方は、雪とあの仇の侍を夫婦にしようと無理強いする。拒否する事の出来ない雪は絶望し友禅で首を吊る。雪の変わり果てた姿におきんは外に助けを呼ぼうとし、半次に気付く。半次に金を託しおきんはおきんで落とし前を付けようとする。お美代の方の寝所に入り込みカミソリでざんばら頭にするのだった。翌日お美代の方は実家の法事で寺へと出掛けたが、おきんの仕業と睨み一緒に連れて来る。そして自白させようとするが、鉄と錠が現れ仇の侍を錠が柱を使った三角飛びで仕置きし、その隙に半次がおきんを助け、鉄はお美代の方の父親を仕置きする。その異変に気付いた警護の侍達を主水が十手で倒す。お美代の方も鉄に腰骨を砕かれ再起不能になるのだった。その後、主水が縛られたお付きの女中達を発見し「物取りの仕業」でケリをつける。
ツボったみどころ。「勿体ねえな。ありゃうもう使い物にならねえな。」と腰を砕かれたお美代の方を見て一言呟く主水。この頃はまだお盛んだった様だ。と、鮎川いずみが雪役で出ている。


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