手塚治虫 火の鳥の改編について 火の鳥と言う作品は、雑誌掲載時のものが、本となり出版される時や、重版するに当たり、作者が加筆・訂正を行い、内容が大幅に改変されている、という有名な作品です。
今回は、流布版である別冊マンガ少年版を元に、考察しています。
具体的には『2ちゃんねるの火の鳥スレ』を部分引用させてもらい、どの部分に重大な改変がされているかを、注釈付きで分りやすくして見て行きたいと思います。
なお、角川版に収録されたものは、マンガ少年版(朝日ソノラマ)よりも更に、改編されているらしいです。
現在は、火の鳥は講談社の、手塚治虫漫画全集に収録の火の鳥か、角川書店のハードカバー版と文庫版、もしくは、復刻版の朝日ソノラマ出版のマンガ少年版に、太陽編を足したものがシリーズに加わって、完結しているもの、などが入手できます。
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ただし1册8,000円というマニア以外には、痛い金額なので注意。 |
羽衣編…被爆者団体の抗議により、セリフも話もコミックス時に大幅変更。
雑誌初出時の作品は未収録。
本来は望郷編のプロローグとなるべき作品
注※この部分は表紙の裏に手塚先生自身の弁があり、羽衣編は雑誌COMに載った超短編ですが、差別問題やクレームがあり、再収録出来ないのでネームの変更をしてマンガ少年に載せたが、更にこれは3度目の修正をしてあります。このエピソードは「復活編」と「望郷編」の間に入るもの、と明記されている。
望郷編…羽衣編の続き。羽衣編のおときはこの時代の人間。核戦争で被爆し、
父の機械で過去にワープしている。後の望郷編とは別作品。
注※なお、これは徳間書店のデュアル文庫『手塚治虫COVER(タナトス編)』に収録(←註*2003年出版で現在は廃刊らしいです)されており、文中に大都社のムック雑誌「コミックヒーロー」と徳間書店の「SF LapanVol`03」と大幅にカットした短縮版が「マンガ少年」に掲載されただけで単行本化はされていなかった。そうである。
望郷編…漫画少年連載時は、ロミは牧村に殺される。
ムーピーを見つけるのはカインの孫。
単行本時にロミが牧村に殺される前に寿命で亡くなる。
ムーピーを見つけるのはカインの子に変更。
最後の牧村の「星の王子様」朗読が追加される。
角川で更に大幅変更。意味こそ変わらないが、セリフもほとんど変更。
またエピソードの順序も何箇所か入れ替えている。
ロミ達を斡旋した不動産屋が、ジョージの死後来訪する部分がカット。
ロボットシバが名無しのロボットに。カインがシバを母と慕うシーン、
ロミに破壊されるシーンがカット。
カインの人肉食いシーン、ロミへ肉食のススメ、カット。
鳥と睡眠中のロミの交信カット。女が生まれぬわけを明らかにしていない。
シド、名前キャラから背景キャラに降格。ノルヴァまるまるカット。
ロミ、電気ショックで仮死状態から頭を打って仮死状態に。
ズダーバンの要求がムーピーからエデン17の位置に変更。 |
望郷編 漫画少年連載時:
ロミが子供を作った男性は、ジョージとカインのみ。
ジョージ→生まれたがカイン。カイン→生まれたのがロトたち6人。
カイン負傷後のロミの冬眠中、エデン17に食糧危機。
カインは自分を6人の子供たち食料にと、身を捧げて命を捨てる。
カイン死亡後に『複数のムーピーのメスたち』がエデン17にやってくる。
そしてムーピーのメスたちは、ロトたちの記憶を元にして、ロトたちが唯一知る人間女性の姿=ロミに似た姿に化ける。
そして『ロトたち6人(つまりロミとカインの息子)』が、複数のムーピーのメスたちと結ばれて子孫を生む。
ロミは「カインはどうしているのだろう?」と考えながら冬眠から目を覚ます。外の風景は一変していた。
カインは死んでいた。 息子のロトたち6人は、異星人ムーピーのメスとそれぞれ結ばれて、子供をたくさん作っていた。
さらにそのムーピーのメスは、自分の姿によく似ていた。
ショックを受けるロミ。ロトたち息子と会うことも少なくなり、数日だけおきてすぐ冬眠が続く。
ロミは冬眠するので生き続ける。
ロミの息子たちは、人間の寿命が尽きて死んでいく。
ロミの息子と結ばれていたムーピーのメス(寿命がかなり長い)は、ロミとよく似た人間の姿でいる意味がなくなり、元々の不定形生物の姿になる。=コムの母親。
なお、後年ロミがコムと初めて会った時に
「コム・・・確かエベル(ロミとカインの三番目の息子)の30番めの子供だったわね」
と語っているのは上の展開を踏まえている。 望郷編 朝日ソノラマ版:
ロミはカインとの間に7人の子を設ける。7番目のセブが生まれた年にカインが事故に会い、
ロミ冬眠。その間エデン17に食糧危機→カイン、身をささげて死亡。
ロミ、冬眠から目覚め、ロミとカインの最初の息子であるロトと夫婦となり、また子供を授かる。
しかし男しか生まれないのは変わらず。
ロミとカインの息子達の末っ子のセブがロミと二人だけで暮らそうとしたが
ロミに拒否されて荒野に旅立つ。他の息子達がセブを敵視していたうえ
(女の子を出産させるため)セブを殺してロミに肉を食べさせようとしていたのを知って ロミ冬眠。
ロミの冬眠中、火の鳥はムーピーを一体調達してセブに与える。
ロミの姿となったムーピーとの間にセブは女の子(触角の生えた例の姿)をもうける。
ロトとその兄弟達は死亡し、ロトの息子達だけが生き残っていたところに
セブとその娘達がやってくる。娘達と子を作るように言い残しセブは去ってゆく。
ロミ、冬眠から目覚め、触角の生えた人間達によって街が築かれていることに驚愕する。
ロミ、エデン17の住人の願いで女王となる。 |
乱世編…弁太(この時の名前はまきじ)とおぶうが兄妹。
乱世編…清盛と義経の犬と猿への転生シーンカット。
清盛の500歳の誕生パーティカット。
角川では義経は矢の集中攻撃を受けて死亡、朝日では弁太に撲殺。
生命編…連載時、青居はテレビ局に乗り込む前に銃殺。
クローンだとはっきり明記される。
角川・講談社の場合はホンモノかクローンかグレーな終り方
太陽編…ハードカバー下巻で加筆変更。変更前=『野性時代』連載版、は以下。
お茶の水と猿田が兄弟で、大友がお茶の水の息子。
猿田が火の鳥によって視力を失う。
光から戻ってきたスグルを巡り、イノリとヨドミの修羅場あり。
マリモが転生した女性の名前がさおりからヨドミに変更。 |
太陽編 角川文庫版(変更前はハードカバー初版): スグルがラーゲルに来るくだりが変更。説明的な台詞やコマがカットされた。
重症のヨドミを介抱する一連のシーンが描き直し。
囚人達の暴動シーンの順番が変更
所長がボロボロになりながら暴動のリーダーがスグルだと告げるシーン、驚愕するナンブと怒る大友のシーンがカット。
所長の死、崩壊するラーゲルのシーンカット
果安と山部王が犬上里に到着、里に向かう犬上のシーンの順番が変更。
↑の変更前のルベツの乗り移りのシーンは大伴連吹負が語る流れになってる。そのため変更前だと犬上は近江内紛の原因がルベツだと気づいている
大海人と犬上の会話が追加
猿田と大海人の新宗教宣言が連続したシーンが時代に沿ってそれぞれ宣言する形に。
マリモがヨドミに転生のシーン追加
「別れ別れになってから一千年もたつよ」、「狗族のふるさと」のシーン追加
で最後は「誰にも圧迫されないほんとに自由な世界へ!」→「誰にも圧迫されない狗族の世界へ! |
まあ、私もマニアではない軽いファンなので、上記のマンガ少年別冊版とか、デュアル文庫とかその他で手に入れた資料などで、各編の解説の項目で、また改めてちょっとだけ改変について、触れてみようかと思っております。 |