【その1】 わたしはリカちゃんでは遊ばなかった一人ですが、近所に一歳年上のいずみちゃんという子がいて、それがリカちゃんのお友達人形と同じ名前であり、お母さんがこれまた洋装の似合うママという呼び名の似合う女性だったので、わたしはいずみちゃんが特別な女の子のように思えたのでした。しかも彼女は父親が外国から買って来てくれたと言う、ドールハウス用の食器や燭台のミニチュアを鞄の様なケースから出して遊ばせてくれたので、なおさら特別な存在なのでした。とはいえ、幼少の一歳違いは結構大きなものがあり、彼女は同い年の子と遊ぶ方が多く、あんまり遊んでくれなくなりました。それでもわたしは、彼女がその頃流行ったアニメの秘密のアッコちゃんの様な、ハイソサエティな雰囲気すら持っているように思えて、彼女が後に引っ越すまでずっと彼女に憧れ続けていました。なので思い出の人形はリカちゃんよりもいずみちゃんです。思えば最初にバービーを見たのも、憧れの生活を送る社長婦人の姪っ子らしい女の子=わたしより3〜4才下の子が持っていたのを見たのが最初でした。今になって良く考えると、社長婦人はその子のお守を良く押し付けて来ていたのではないか?(ものすごいわがままな子で、すぐ泣き真似する。トイレに行きたいと言うだけの事を叫んで地団駄踏んで騒ぐ様な、手に負えない子だったので持て余したのだろうと思われ)と気付いたのですが、わたしは自明の理みたいなのに気付かない所があるらしく、ある一面がすっぽり抜けているんじゃないかと良く言われてしまう人間なのでそうなのでしょう。とにかく、その子がバービーを持っていたのですね。しかもアメリカ製の。その頃のわたしはリカちゃんとかいずみちゃんしか知らなかったので、ボンキュッボンとしたナイスバディの人形を見るのは初めてで、その形状を異様に感じたのでした。胸が大きくて足の長いそれは、おもちゃとは思えませんでした。しかも、その子は後におばあちゃんから作ってもらったという、和服を着せていたのですが、正直、田舎臭い地味な柄と色のその着物は、人形にまっったく合っていませんでした。体型的にも。と言う事もあり、そのわがままっ子に苦労したお守の記憶と、実物以上に印象的にディフォルメされ、思い出に焼き付いたバービーの異様な体型がオーバーラップされてしまい、わたしはバービーと言うものには興味が持てませんでした。 |