あまりの放置プレイぶりに、もう出番は無いものと諦めていたスワロウが【11巻】より満を辞しての再登場。ここでこれまた再登場のレイを伴っている。紅号に乗る二人がこっちの二人(ヘイトではなく、スワロウ、とレイ)で見られるとは…。ここまでは=ヘイトが仇の4人を倒し元凶と目されるプログレスに戦いを挑み敗退するまで、は物語はどこかしらまだ現実的なヘイト個人の復讐劇ではあった。しかしヘイトが破れ、プログレスを阻止する者がいなくなると、プログレス天下の好き放題やりぃの人類の破滅までに及んでしまった。ここ迄来ると、ヘイトとしてはあくまで個人的な復讐なのであるが、実態はそうではない。世の中の様相からして、バイオレンスジャック世紀末救世主伝説になってしまったのである。そして一度破れ去った者がこの様変わりした世界で、支配者までに登り詰めた男に辿り着くのは容易ではない。その難関がスワロウである。彼は崩壊後の世界の象徴とも言える。なぜなら、前の4人とスワロウは決定的な違いがある。スワロウには信じる=愛する対象がいないのだ。かつての敵達、ジェストにはマリアが、ラフィンにはサンディが、アールダーにはヘイト(!?)もしくは暗黒面に堕ちながらも殺しへの信念と光を求める心が、ランパートには娘が、それぞれ存在していたのである。だが、スワロウにあるのは絶望だけでその他には何も無い。基本的にはスワロウ自身の中に、『自分は誰からも愛されていない、必要とされない存在であり、人が自分に優しさを見せる時は自分を利用する時だ』と言うのを嫌と言う程に思い知らされている。(博士が自分の研究のモルモットとして、スワロウに義足とゼスモスの開発をしたのも先刻御承知なのである)それゆえ前の4人とは世界も環境も異なり、人類粛正後に生き残り以降、雌伏の時を経てパワーアップしたスワロウがお得意の【信用&裏切り】のコンボでヘイトを慕うレイを打ちのめし(レイは後に、ヘイトの道を照らす光となる役割を果たす)、ヘイトの前に破壊王として名を変え立ちはだかる事によって新世界の世界観はより鮮明になるのである。

結構好きなキャラだったんだが…スワロウ。今度はヘイトの様な父親の元に産まれますように。
スワロウは実の母親からも愛も存在理由も与えられず、悲しみを背負って産まれて来た。幼くして捨てられた彼は大人の餌食となり、強い者が弱い者を食い物にするという処世術を学んでしまった。しかし、それを否定してくれる誰かをスワロウはずっと探し続けていた。強くなる事、これは弱き者が己の身を守る術である。ゼスモスにそれを求めたスワロウだったが、ゼスモスの強さとは破壊する為の力では無く、繋ぎ止める力であった。ヘイトのゼスモスは、繋ぎ止めたスワロウの『悲しみ・絶望』を壊した。ヘイトの温もりと人間の大きさに触れたスワロウは改心し、自ら罪の償いをしたのであった。

モドル