『魔法入門』W.E.バトラー 角川文庫
専門書である。この書は2部構成で、前半は魔法の本質、目的などをレクチャしている。後半部分では一般人が秘儀へ参入する為の訓練方法などが述べられている。が、難解すぎて理解できるかどうかは保証しかねる。なぜなら、出てくるオカルトにつきものの用語をどれ位理解した上で臨むかによるからだ。注釈はほとんどなし。決して、入門書の類いではない。著者はイギリス人で、秘密結社「薔薇十字団」の流れを汲む「黄金の夜明け団」(ゴールデンドーン)の領袖たちから最も正統な魔法を学んでいる上に、インドのヒンズーの秘儀をも身に付けている、本物の魔術師である。そのせいかインドの密教の影響も端々に見られ、なお難解なものになっているのは否めないだろう。とはいえ、カバラ(ヘブライの神秘主義、西洋魔法の中心的教義でもある)について知りたい人はかなり勉強できるに違いない。例)カバラの目的とは、人類をアダムカドモン(最初の人間、罪によって楽園を追放される前の人間の意)の状態に戻す事。錬金術の目的は非金属を金に変える、の例えで人類を不変なものへと変える、つまり不老不死こそが本当の目的であるなど…。
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『ユングとオカルト』秋山さと子 講談社現代新書
ユングと言うと、言わずと知れた精神科医です。彼はフロイトに師事していました。そう、フロイトと言えば、夢判断です。それも、リピド−からの解釈を試みようとする。それで、すべて割り切れるなら、世話は無かった訳ですが彼、ユングはもう一歩進んだ観点からの解釈の必要性を痛感していました。分裂した自我の統合されるアクエリアス(水瓶座)の時代を信じていた彼は、心の中の無意識界に潜むモノ、それがキリスト教と相入れぬ部分に着目し、それを二元的なものつまり、善と悪、光と闇、意識と無意識のバランスをとるものとして捕らえた結果、キリスト以前の原始的な意識の流れに人間の癒しを求めたわけです。それが、今グノーシスと呼ばれるものでした。ここでは、グノーシスの教義を各派解説しています。これは、読むとわかりますが、多分あの"エヴァンゲリオン"がこの教義を基にしていると思われます。ワイルドファンに懐かしい、"ジョン・ディー"(実在してます。数学者&錬金術師、有名人ですよ)の事も、ちょっぴりですが載ってます。
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『オカルト』坂下昇 講談社現代新書
上記の"ユングとオカルト"の副読本として読まれる事をお勧めする。より理解出来るに違いないからである。こちらは、観念的な部分は薄れカバルと呼ばれるもののゲマトリア(数秘術、簡単なものは誕生日や名前を数字に置き換えて占うものが、巷に氾濫している)による解釈などを行っているが、本質的な所での理解は、この本の読み易さと見事に反比例している。前述のグノーシスの教え、なども書かれているが、やはり上記をある程度理解した上でなければ本書の自己の解釈は覚束ないだろう。それは、この本自体の難易度が高いのではなく"オカルト"というものが、それ程までに難解である、という意味である。
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