第13話『ハリケーン』

劇中台詞 【B=ブラック・ジャック ク=クロスワード ケ=クロスワードの妻ケティ ジ=ジグソー ト書きB=ブラック・ジャックが状況説明、第一部ではブラック・ジャックギャング団の担当】

『ギューーーーン』飛行機の音

B独白「世界中に三百の会社を持つと言う大財閥クロスワードが、なぜひっそりとこんな小島に。しかもブラックジャックに何の用があると言うのか」

ジ「うーん、ケティ。続きは夜までお預けだよ。ブラックジャックを迎えに行った飛行機が到着したらしい」

ケ「うんっ、いじわる。ジグソーったら」

ジ「奴を呼んだのは君じゃ無いか。大金をごっそり巻き上げるモグリの医者なんぞ僕は信用出来ないな」

ケ「でもジグソー。まず主人の病気を治す事が先決じゃないの」

ジ「そうか、遺言状も書かないであっさり死んじまうと僕も困る」

ケ「そうでしょ?早く夫の財産をあたしのモノにして」

ジ「僕達のモノ、だろう?」

ケ「そうよジグソー。ああ、ジグソー」

ジ「お手並みを拝見しましょう、奥さん」

ケ「いやーーん、奥さんって言うのやめて」

ジ「ケイティ」

『ジャブジャブ、ジャバ、ジャブジャブ』水で洗う音

B「多分膵臓癌だ。何度か手術したが、すぐ再発している。これ以上の手術には体が耐えられまい」

ク「ほっ、はっはっはっはっは、ほーっほっほっほっほ」笑う

B「手遅れだな」

ジ「先生、それじゃあ治る病人もガッカリして治らなくなってしまう」

ケ「先生、何とか主人を助けて。お願い」

ク「若造だが、ズケズケものを言うやつじゃ。今までワシを看たやつはどいつもこいつもビクビクペコペコしおって、きっと治ると心にも無い事を言いおったわ。はっはっはっは」

B「私は気休めは言わない主義だ」

ク「いや、手遅れでも良い。さっさと手術しろ」

B「私に任せるかね?すくなくとも4回に分けた手術が必要だ」

ク「やれ、今すぐ第一回目を」

B「奥さんと甥子さんのジグソー氏は外へ出て頂く」

ク「二人とも出て行け。ワシの金を狙っているシデムシが」

『ビュウーーーー』風の音

ケ「先生は凄腕だけど、高いお礼を要求為さるって聞きましたわ」

B「手術が全部済んでからだ。2.3日して2回目の手術を執刀する」

ケ「あたくし先生にたっぷりお礼を差し上げる為にお願いがありますの」

B「ほおーう」

ケ「主人は先生をすっかり信用してますわ。先生の言う事なら何でも聞くでしょう」

B「で?」

ケ「主人に勧めて頂きたいの。あたくしに全ての財産を譲る遺言を書く様に。書かなければ治療を止めて帰るって」

B「それじゃあ脅しだ」

ケ「十倍、十倍のお礼をお払いするわ」

B「俺は医者だ。弁護士にでも頼むんだな。風が強くなった。ハリケーンが来そうだ」

『ビューーーービューーーーービュオオオーーーー』風の音

『バッタン、バタン、バタン』風に何かが打ち付けられる音

B「クロスワードさん。余計な事かも知れないが、奥さんと別れた方が良いな」

ク「なにっ?きっ、貴様偉そうに。ううっ、あ、あれでもケティはな、ううっ」

『バタン、バタン』

『ドーーーンガタタタン』大きな音

ジ「ケティー、大変だ。飛行場に止めてあった飛行機が風で」

ケ「ええっ!! 」

ジ「しかもハリケーンは真直ぐにこの島を横切るらしいぞ。今の内にこの島を抜け出さないと、何もかもすっ飛んでしまう」

ケ「でも、飛行機が」

ジ「二人乗りの小型機が残っている。でも、パイロットの他に二人しか乗れない」

木琴場面転換音

『ビュオーーーー』

B「イカンッ!! 病人を今動かすのは危険なんだっ。勝手に飛行機に乗せたりして、俺は責任は持たんぞッ」

『ブルルルルルルルーーー』プロペラを回す音

ケ「ジグソー早く、乗って」

ジ「先生っ、気の毒だがあんたにはここに残ってもらうよ。二人乗りに三人乗るんだ。四人はどうやっても無理なんだよ」

ク「いかんっ、医者を置いて行く事はこのワシが許さん」

ジ「別の医者を探せば良いでしょう」

ク「ワシの手術はまだ、まだ終わっとらん」

ジ「構わん、パイロット、出発しろ」

ケ「ダメ、ジグソー。三人じゃ重すぎるんですって。もう一人降りなければ離陸出来ないのよ」

ジ「じゃあ爺さんだ。クロスワードさん。あんたが降りる番だよ」

ケ「ダメよっ、財産はどうなるの?この人は殺せない」

ジ「うるさいっ、このピストルが見えないのかっ。助かりたければ病人を降ろせ。こんなくたばりぞこない、どうせすぐ死ぬんだ。出発しろーっ」

『ブウウウウーーーン、ブーーーーーン』

ピアノ転調

ク「はっはっははははははは、いや、ワシもじゃが、お前さんもずいぶん悪運の強い男だ」

B「いやあ、二人してあの古井戸の中に西瓜の様にぶら下がっていなかったら、今頃は屋敷と一緒に吹き飛ばされていた所だ」

ク「全く、何もかも飛んで無くなっちまってる。おっ、あれは」

B「あの飛行機の尾翼だ。海岸に近い海の中に突っ込んだんだ」

ク「助かりたい奴が死んで、助かりそうも無い人間が生き延びた。皮肉なもんじゃて」

B「さて、2回目の手術を始めますか」

ク「なにっ?今ここで?」

B「フッフッフフフ安心しなさい。手術道具一式、地面に埋めておいたんだ」

ピアノ転調

ク「あんた、しぶといやつじゃな。しぶとい、うーん、プロじゃ」

【-完-】

感想・他…旧コミックス14巻第129話「ハリケーン」。財産目当ての若い女が年寄りの男と一緒になるって良くある事だ。老人は最期を若くて美しい妻に優しく最期を看取ってもらえれば、後は財産やっても悔いは残らないんだろうな。良いと思うよ。看護って愛情が無いと、ってかあっても辛いし。金の為だろうと献身的に世話してもらえれば嬉しいんじゃん?それよりも、何もしないで死んだ途端に群がるハイエナ親族の方が心底うんざりだよね。

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