『第13話・道すがら』 劇中台詞 【ロ=ロペス B=ブラック・ジャック ピ=ピノコ 息=ロペスの息子 農=農婦 ギ=ブラック・ジャックギャング団】 |
ギ「スペイン」「ピレネー山脈の、ある峠」 『ギギーッ、ギュギュッ』車の急停止音 男A「手を挙げろ」 B「何だ?何の用だ?お前…」 男B「おおっと、そのまま大人しく車から降りてもらおう」 B「私はただの通りがかりの医者だ。名前はブラック・ジャック」 ギ「(2人で)ガッツーン!!」 B「うわっ! ううっ…」 ギ「お休みでゴンス」 (木琴の場面転換音ラテン調) 農「おやあ、気ィが付きなすったかね。峠にぶっ倒れていなすったんで運んで来ただが、生憎とこの村には医者がいねえもんでよ」 B「私が医者だ。うっ、ああ…。済まんが車のトランクに商売道具の入った鞄があるはずだ」 農「んーんー、車のトランクも鞄もしっかり引っ掻き回されてたで」 B「この先の街で金持ちの娘を治療して礼金を貰ったんだ。その金を狙ったんだな」 農「金だけで命まで取られなかったのはめっけもんだ」 B「ひッ捕らえて-」 農「ダミだ!! 」 B「ううっ…」 農「ここらの盗賊は警察より強えだ。昔の革命軍のゲリラ隊の勇士だで、諦める他ねえだど」 ギ「小さな村で」「あっという間に」「1週間」 B「お陰で元気になった。ぼつぼつ出掛けるとするか」 農「せぇんせえ〜〜、はあっはあ。先生この先のロペスの旦那の家で息子さんが酷く苦しんでいるって言うだ。おねげえしますだ。見てやっておくんなせえ」 B「いいだろう。お礼代わりにやってみよう」 息「うう〜〜、ああ、う〜〜〜…」 B「あんたがこの村の顔役のロペスか」 ロ「そうだ、ドクトル」 B「息子さんはいつからこんな風なんだ?」 ロ「今朝がたからだ。この頃飯を喰ったり物を噛んだりするのが不便になったと言っていたが、そのうち口をきくのもしんどそうになって幾晩も眠れずにいたんだ。それで今朝急に苦しみ出して」 息「うっ、はうっ……」(呻き続ける) B「破傷風だな」 ロ「破傷風?」 B「野山を歩いたりして傷を負うと、そっからばい菌が入って起こるんだ。痙攣を起こしている。ここまで進行していると九割は助からん」 ロ「おいッ!! ドクトルが良く見えるように窓を開けんかっ! 」 B「イカンっ! 日光なんか入れたら余計痙攣が酷くなる。それよりその辺に突っ立ってるむさ苦しい連中を外へ出してくれ」 ロ「ううっ、何とかしてくれ。倅を助けてくれ」 B「治療代を払えるかね」 ロ「も、勿論だとも。い、幾らだ。言ってくれ」 B「あんたの倅が俺から奪った金を全部だっ!! 」 ロ「なにっ?! 」 B「1週間前、峠で俺を襲ったのはこいつだ! この部屋に入って直ぐ分かった。盗賊の1人が酷い腋臭だったからな。忘れようったって忘れられない証拠って奴だ」 ロ「ドクトル、あんた俺の倅にあらぬ罪をなすりつけようってのか?」 B「間違い無い」 『カチャリ』撃鉄を起こす音 ロ「もう一度抜かしてみろ。その脳みそをぶっ飛ばしてやるぞ」 B「勝手にしろ…。俺はもう出て行く」 ロ「おい、皆ッ!! 」 『カチャ』『カチャ』『カチャ』一斉に撃鉄を起こす音 ロ「ドクトル、戻って来るんだ。そして息子を治療しろ。治せなければ生きてここから出られると思うなよ」 B「ワクチンも抗毒素血清もなしにか」 ロ「いいからその悪魔を倅の体から追っ払え! 早くだ!! もたもたすんな。さっさと始めねえか」 B「湯を沸かせ。もっとタオルだ」 息「ううっ! ---」 B「イカン、呼吸が止まった…」 ロ「おおっ、倅どうしたんだ。死ぬなッ! 死んじゃいかん。うっ、野郎何する気だ。刃物なんか持ち出しやがって」 B「気管を切開する」 ロ「そんな物を、倅の喉に刺してみやがれいっ。この場で貴様をぶち抜いてやるぞっ」 B「目障りだ」 ロ「くううっ!! 、こんにゃろ〜」 B「俺の前でそんな物を持ってうろちょろするな」 ロ「殺してやるっ」 B「息子を助けたく無いのか?」 ロ「ううっ」 B「出てけッ! 皆出て失せろっ!! 」 (木琴場面転換音、ラテン調) B「あとは栄養をうんと取らせる事だ。この皮下注射を1ト月に一回教えた通りにな」 ロ「ドクトル、少ないが俺からの礼だ」 B「ふん、いらん! 取られた金を返してもらうまで、そんな物は受け取るつもりは無い」 ロ「うっ、あんた倅の命の恩人だ。だが、倅に盗っ人の濡れ衣を着せる事だけは許さねえぞ」 B「親バカもそこまで行くと始末に終えんな。ンッフッフッフッフッフ…」 ロ「てぇいっ! 行ってくれ! 」 B「フッフッフッフ、ハッハッハッハッハッハ」 ロ「俺があんたを殺さない内にな…、出ェてけェ〜〜!! 」 (木琴の転換音) 『クオゥクオゥクオゥ』カモメの鳴き声 ギ「それから一年」「日本」「お馴染みでゴンス」「海を見下ろす崖の上」「おんぼろ西洋館」「ブラック・ジャックの家」 ピ「セニョーユ、セニョーユ、ドルトーユー」 B「何だ?ピノコどうしたんだ」 ピ「ビノコ、セニョイータよ。ベッサメムチョアディオスもチョーチョ、チョーチョ♪菜の花に止まえ〜♪の、わかやないのよー」 B「誰か来たのか」 ロ「ドクトル、俺だ」 B「ロペス…」 ロ「随分探したぜ。骨を折らせやがって」 B「何の用だ。もうあんたとは何の関わりも無いはずだ」 ロ「それが俺の方にはあってさ、片付けてェ事がよ」 B「どう言う事だ?」 ロ「詫びに来たんだよ。おいッ! 入ェれ。さっさと入ェって来やがれ」 B「おっ、…あんたの息子じゃ無いか」 ロ「あれから倅に聞き出したよ。やあーっと口を割りやがッた。ドクトル、あんたの言葉通りだったぜ。峠であんたの車を襲って金を奪ったのは、こいつとこいつの仲間達だった。さっ、奪った金だ。調べてくれ。ああ、俺はこれまで相当荒っぽい仕事もしたし、人を殺した事もある男だ。だが、受けた恩義だけは忘れねえ。さっ、こいつをあんたに引き渡す。煮るなと焼くなと好きなようにしてくれ。銃がいるならここにある」 B「撃てと言うのか、自分の息子を」 ロ「構わん。撃つがいい。殺せ」 B「ロペス、ここは日本だ。ピレネーの山ン中とは訳が違う」 ロ「心配いらん。罪は俺が引き受ける。さあ、やってくれ」 B「分かった。……、やっぱりお前だったんだな。車から降りた俺を死ぬ程殴り、金を取って逃げたのは」 息「ああっ! 」(恐怖のあわわ声続く) B「あの農婦に見つけてもらわなければ、俺はあのまんま、死んでいたかも知れなかった。あの時、俺も。こうやって銃を突き付けられて、手出し一つ出来無かった。…こうやってな」 『カチャリ』撃鉄を起こす音 ロ「やれ、何をぐずぐずしている。早くやってくれ」 B「よおーし」 『バアーン』銃を撃つ音 ロ「床板を撃ってどうする。医者の癖にどう撃てばいいのか判らんのか?」 B「撃てばまたムラムラと治したくなる。ロペス」 ロ「何だ?」 B「こんな男を治療するのはもう真っ平だ。早く連れて帰れ。二度と見たく無いッ」 ロ「ウッフッフッフッフ、ウッヘッヘッヘッヘ、グワッハッハッハッハ、ブラック・ジャック、あんたって男は! グハハハ、アッハッハッハッハッハ、アッハッハッハッハ」 (主題歌のインストゥルメンタル) ピ「しぇんしぇい」 B「ん?何だ、ピノコ」 ピ「あのヒゲダユマ、泣いてた。笑いながらポヨポヨ泣いてたれすね」 B「うん、ああ…」 ピ「しぇんしぇい、ベッサメ・ムーチョ」 B「…もう、やめろ」 【-完-】 次回は第14話「めぐり会い」です。お楽しみに |
感想・他…おおっ、ロペスの声が熊倉一雄だ。ドーナツ版のゲゲゲの鬼太郎持ってたよ。そう言えば昔鬼太郎に似てると言われてたなー。(昔は)あくまで正統では無い=ちびっ子がなりたいとは思わない類いの、ヒーロー。あくまで得体の知れない妖怪小僧という認識だった鬼太郎、懐かしいなーwww。 これはコミックス8巻第76話です。これもまあ、概要としてはほぼ原作と同じですが特筆すべきはその原作には無い、最後にブラック・ジャックが散々言葉でいたぶり、執拗に脅し付けてから撃つ真似までする、というのが ああん、…もうグレイト!! 思わずハアハアだぜwでした。 |
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