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| 所謂スプラッタと称するものも嫌いではないのですが、あれは肉体的な暴力に酷似して直接的であり、むしろ"びっくり"であるのに対し、私の思う恐怖とは、背中から脳にまで"カッ"と熱いものが駆け抜け、全身の毛穴から"ドッ"とばかりに汗が吹き出し、毛が逆立っているのがわかり、その後で猛烈に怖いと思う感覚、が正しい反応だと思います。私がこの本の話を読んだ時そうでしたから…『黒沼 健』氏の怪奇実話シリーズの"消えた灯台守"という実話です。 |
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-概要-
スコットランドの西北の島は無人島で、年中霧に包まれている。その島は難破した船員たちが流れ着き、飢えと乾きに死んだと思われる白骨だけが見られる無気味な島である。ただ、そんな島にも、世捨て人めいた聖職者が静かに余生を暮らしたと伝えられる礼拝堂が
あった。17世紀のことである。それから200年余りが経ち、1,899年イギリス政府は、「この海域が難所である」という船乗りたちの懇願によって灯台
を建てる事にした。そしてその灯台守に4人の船員上がりの海の強者(つわもの)が選ばれた。島には2週間に一度、補給船が来る。その時に4人の内の一人が
本土で2週間の休暇を取る事になっていた。そして、2週間が経ち補給船に乗って島へ渡ると同時に、別の者が入れ代わりに本土へと帰り休暇を取るのだ。つま
り、6週間島で過ごし、2週間休暇を取るというローテーションである。しかし、…そこは北海の荒海で、年に数日しか晴れる事のない霧に閉ざされた世界である。春や夏はそれでもなんとか過ごせたが、秋から冬にかけては、絶え間ない暴風と波の荒れ狂う地獄さながらの様相を呈している。4人には次第にこの生活が堪え難くなって行った。そして、不可解な出来事が起こった。4人の内の年長の男が、いつものように休暇を取り島へと戻る時であった。それまでの2週間珍しく穏やかだった海が荒れ狂い、補給船は6日間も予定を過ぎ12月26日になりようやく島へと着いた。島へと船を着けた時、いつもならば我先にと飛び出してくる男たちが、その時は一人も出迎えに来なかったの
である。船長と6人の船員、そして休暇から帰った灯台守の男は怪しく思い、みんなで男たちを探した。しかし、灯台の中も、側に建てられた宿舎も、きちんと
整とんされている様子で、何者かが押し入った形跡すらない。島中隅々探したが、とうとう誰も発見出来なかった。そこで、灯台守の男は"灯台日誌"を思い出した。「そこに何か書かれているかも知れない!」と言った。が… 日誌の内容はとても奇妙なものだった。 |
| 【12月12日今までにない位の暴風雨が灯台を襲う。大疾風というものすごい風があると聞いたが、これがそうだろう。波はますます高く、灯台をすっぽり包んでしまいさえする。Dの様子が変である。つまらない事に難癖を付けては当り散らしている】 しかし、12月12日にそのような嵐があったという報告はどこからも受けてはいない。そして、Dとは元々大人しい性格の男で、休暇から戻ったばかりでそんなに怒りっぽいというのも妙な話である。その先には、こう書かれていた。 【PM12:00嵐はまだ止まない。風が強く、外へは出られない。沖を船が霧笛を鳴らしながら通る。勇気のある奴等だ。Dのイライラは治まった様だ。が、Mが子供の様にワァワァ泣き出した】 Mは4人の中で一番の暴れ者で、「あの男はオヤジやオフクロが死んだとしても、涙ひとつぶこぼしゃしないぜ」とまで仲間に言わしめた程の男である。そして‥ 【12月13日嵐はまだ止まない。一晩中猛り狂っていた。Dは今日は大人しい。Mは今度はお祈りをしている 】【PM12:00ようやく嵐が治まった。DとMと三人でお祈りをした】 荒海で暮らした船員上がりの男たちが暴風雨をそんなにも恐れるだろうか?彼らの性格を良く知る残された男は、神に感謝などと言う事は到底信じられなかった。そしてやはりこの時も、近く(30キロ離れた)の島でも近くを航海していた船からも、大暴風雨などというものはなかった、と報告されている。そして最後に 【12月15日嵐静まる。海は鏡の様に静か。神は至る所にい給う】 とだけ記載されていた。残された人々は日誌が13日から15日へと日付けがとんでいるのを変に思った。 一体、日誌に記されていない14日に何があったのだろうか? |
| ただ一つ残された手掛かりが、狂気じみていた場合(何一つ事実にそぐわない事)を考えると、とても怖いです。そして、もしそれが本当はそれこそが全て事実だった、としたらもっとイヤです。 |
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