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スノウフラワー(出会いの前のひととき)

雪が降る。
花の様に。
人の心に降り積もる…
それは何?
真っ白な清純さで何かを覆い隠そうとする様に雪は降り続く…  (イラスト:ミミ)


---ティムの場合---

「雪だ!」
と、トニー君が叫んだ。
「道理で寒いと思いましたよ」
とスコット君が空を見上げながら手を翳した。
僕は鉛色で憂鬱な空を見上げ、同じく憂鬱な気分だったのが
一気に吹き飛んだ。

「積もると良いね! 」
と、僕が言うと、

「決まってんだろ。今日の午後からは、"雪だるま大会"だ!
誰が一番でっかいのを作れるか競争だ」
と、トニー君が大声で宣言した。

雪はその後ずっと降っていた。

「ようし、始めるとすっか!」
とトニー君。
「いいですよ。こっちは準備万全ですから」
とスコット君。
「あーっ!ずるいなあ。道具はありなの?」
と僕。

「へっ、道具なんか使ったって、このトニー樣にはかないっこ無いさ」
と、早くもトニー君は雪を丸め始めた。
「フライングですよ。まったくもう……」
とあわててスコット君と僕も雪を丸め始めた。

そこへ、街の子供達がやって来た。
「おい、見ろよ」
と言い、
せっかくスコット君の作りかけだった、大きな雪だるまの胴体を蹴り崩した。

「ああっ! 」
スコット君が悲し気に声を上げた。
「ちくしょう! よくもやったな」
とトニー君が親玉らしい男の子の前に走り出て、拳を握った手を突き出した。
今にも殴り掛かりそうなその勢いに、
「ちょっと、待って下さい」
と、スコット君が言った。すると奴らは
「おっ、何だよ。怖じけづいたのか」
と、すかさずこちらを挑発してくる。

「ちょっと、トニー君、……、奴らの方が数では圧倒的に有利ですよ。
まともにやっても勝てっこありません」
と興奮するトニー君を諌め、スコット君は声を潜めて言った。
「じゃあ、どうしろってんだよ。このまま馬鹿にされて黙ってろ
って言うのか! 」
「いいえ、雪合戦で決着を着けましょう! 」
と、スコット君がきっぱりと言った。
「うーん、雪合戦かあ。それなら勝てるのか?」
とトニー君はあんまり気乗りがしないみたいだった。
「とにかく、やりましょう」
スコット君の鼻息は荒かった。
「勝つにはですね………」

「いいか、6対3だぞ。仕方ねえよな、お前らのチームに入りたい
奴がいねーんだもんな。がっはっは! 」
と奴らは嫌な笑い方をした。
「いいぜ、その代わり俺らの陣地はこっちで、お前らはここだからな」
「いいとも、勝負だ。お前らが負けたら一生俺達のパシリにして
こき使ってやるからな! 」
「なにをーっ! その言葉そっくりお返ししてやるぜ!! 」
と、トニー君は負けずに言い返した。

雪合戦開始---
とにかく、僕らは分業した。

雪だるまを潰して、雪を丸めるのが僕とスコット君。
トニー君が投げるのだ。
しかし、多勢に無勢。
すぐに僕らは雪まみれになってしまった。
結局は、作りながら投げる事にした。

トニー君が見当違いの方向へばかり投げるので、奴らは馬鹿にして笑っている。
が、笑っていられるのも、少しの間だ。

"どどどどどっ! "
屋根の雪が一斉に奴らの頭上に降り注いだ。

「やりぃ! 」
トニー君が拍手喝采した。
「約束通り、今日からお前達皆、俺様の子分だぜ!って、言いたい所だが、
勘弁してやるよ」
と、トニー君は言って、雪の中から敵だった奴らを引っ張り出してやった。
「へっ、良いとこあるじゃねえか」

こうして僕らはたちまち友達になった。
そして、一緒に遊んだ。
でも……

「暗くなって来たな、おい、帰ろうぜ。じゃあまたな」
「あっ、父ちゃんだ。迎えに来てくれたんだ」
「帰ろうぜ」
「じゃあな!」
と、灯ともし頃には皆、潮が引く様に帰ってしまい、残されたのは僕ら三人だけだった。

雪はいつの間にかとっくに止んでいて、僕らの走り回ったあとの泥まみれで
黒ずんだ雪が、見るにつけ何故だか寂しかった。
僕らは顔を見合わせた。
「雪、また降ると良いですね」
とスコット君が言った。
「また、皆で雪合戦しようよ。今日は楽しかったね」
と僕が言った。
「ああ、そうだな」
とトニー君が空を見上げて言った。

-fin-  

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あとがき……これは主役6人の6つに分かれていた話のティム編です。イラストが気に入ってたので載せました。確かコンテストに送った様な?懐かしいです。


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