目次へ


元々このページはハレ・ケカレが載ってたのだが、少ない情報量の為に、第五回の暦の読み方に移動した為、急遽でっち上げ、作ったページである。とりあえずなので、コンテンツ内容は随時追加されるかも知れない。
序章
ラヴクラフトの創世したクトゥルー神話がなにゆえこれまで人々の支持を得ているのか?物語の不気味さと覗いてはイケナイ=神の世界、の人の世の人智を越えた所にある無力で無情な陰鬱な世界観、これは宇宙人が攻めて来たり未曾有の大災厄が起こるのを否定しつつ求める様な精神構造に合致した物語でもあるからだろう。ラヴクラフトの好んで真似たエドガー・アラン・ポーのそのスタイルにオカルトめいたものを感じただろうし、寝物語に楽しんだらしい千夜一夜物語の魔法を使う魔神や有り得ない生き物達にも彼の想像力はいたく刺激されたに違いない。ここにもクトゥルフの怪物達が潜んでいるのだ。
同じ神話という観点から関連付けてみた場合避けて通れないのが、伝承や巷間に溢れる魔術書の類いなどである。ここに一片の史実や真実が隠されていたとして、それを探り当てるのは容易ではない。しかし、想像や推測ならばできる。彼はギリシャ神話にも影響を与えられたらしいが、これは明らかにゼウスが父クロノスを殺してその地位を得た様に(その父クロノスもその父親であるウラノスの男根を切除して追い出し地位を奪っている。その報復にウラノスはゼウスに力を貸している。が後にウラノスはゼウスとも決裂している)旧支配者は地位を奪われるが、その新支配者の支配下の者を操り復権を狙っているが、という大まかなクトゥルフ体系の骨子と同じ図式である。それともう一つ関連があると思われるのが、ソロモン王のグリモワール=魔術書である。俗に言うソロモン72柱は安倍清明の式神の様にソロモン王が使役した悪魔達の数である。ソロモンの著書と言われている魔術書レメゲトン=悪魔や精霊などの性質や、それらを使役する方法を記したグリモワールの一つ、に記載された、封じられた神々が異国の神であり、異形な容姿は彼ラヴクラフトの記した旧支配者の姿とイメージが重なる。恐らくこの有名な書物をモチーフにしたものがラヴクラフトの書いたクトゥルフの旧支配者達なのだろう、と容易に推察される。それは彼が同時代の霊能者やフリーメイソンなどと交友関係があったからでもある。彼らは近代オカルチシズムの草分け的存在でチャネリングと言う高時元からの存在の意思と通じていたと言う事だ。この彼らの接触していた存在は確かに人間側から見ると特別な能力を持ち、優れた存在に見えなくも無い。だが、それが我々に害を成す邪悪な存在ではないと言えるか?そもそも名乗った通りの者であると確証を得られるか?を疑うと、その姿はたちまち別のモノへと変容する。それが旧支配者の様なこちらを虎子眈々と狙っている存在なのだと彼は考えたのかも知れない。しかし、もう一歩踏み込んで見ると彼の物語がただのお伽話や伝承よりも更に都市伝説の様に、有り得るかも知れない話に特化したのは、カビ臭い舞台に持ち込まれた近代的な自然科学の様な臭いがするからだろう。ハーバート・ジョージ・ウェルズ著の深海にて(1896年著、深海探査船に乗り込んだ男が深海の底で見たものは有り得ないものだった。)が、明らかにラヴクラフト神話インスマスやダゴンなどの水棲生物の物語のアイディアの元ではないかと思われる。H・G・ウエルズは絶滅した巨鳥の話やタコ型の火星人や透明人間やタイムマシンや他の有機生物から人造人間を作るという概念を初めて書き記した、SF好きを自称する者なら必ず読むはずの作家である。人類が未発見の、だが、伝説や伝承では知られている存在にこの様な新世界のリアリティを加えればそれはもはや生々しく禍々しい予言となる。そう言った意味でもラヴクラフトの神話はこれからの時代も進化し続けるだろう。これは新しい暗黒の創世記なのである。
夢の旅人
その夢をみたのは随分前の事だ。その頃の私は孤独で明日への希望も見出し難い状況であった。自分の心を書き連ねて物語を作る事と、そしてその頃手に入れた魔法書を読む事だけが私の楽しみだった。私には何処にも居場所が無く、かつ持たざるものであったので、友達付き合いすら出来ず本当に独りぼっちだったのだ。しかしそうした身の上に対する怒りすら無かった。諦める事、それが自分の身を守る術であるのを悟っていたからだ。夜ごとの夢ですら暗黒の中独りで彷徨う。そんな私の夢に、あの人達が現れた。突然彼らは現れたのだ、私の世界に。困惑した。それまでの夢は所詮私の世界で、暗闇すら私のものであったのだとその時に認識した。しかし、彼らは明らかに異物だった。そう他人が土足で私の中に入って来たのだ。夢に変なリアルが持ち込まれた、そう認識した途端に夢と現実の境界が再び曖昧になった。だから彼らの1人が接触して来たときも、夢の中なのだからと気軽にそしていつになく快活になって応じていた。その会話の詳細は覚えていない。年格好は私と同年位の若者に見えた。彼が教えてくれた話によると、彼らは飛ばされた人々なのだそうだ。望んでそうなったが、今はこちらの世界に帰りたいのだと言う。で、その為の入り口を間違えて出られなくなったのだそうだ。それがどうも人の意識が底で繋がっていると思われる夢の世界、だったらしいのである。つまり、彼らの思惑では人々のいる所を目指せば人間の世界に戻れるはず、が人々の思いの溜まり場=現実、ではなく人々の思念の溜まり場=夢の世界、の方に入り込んでしまったらしい。しかも、人間は何時間かしたら必ず起きるので一つ所の夢に留まれないらしい。ずっと放浪しなければならない運命なのだ。だが、その放浪の中で夢主と会話し情報が得られる事を知る。根気強く調べた結果、入り口の人間がいたら、反対の出口の人間も存在するらしい事を突き止める事が出来た。それでそれらしい夢に入り込んで調べていると言う事だそうだ。残念ながら私ではなかったが。そして話しているうちに私にも彼らとの別れの時=私の目覚めの時、が近づいているのに気付いた。「もう一度会えない?」との私の問いに、彼は「同じ人間の中には二度と入り込めないんだよ」と言った。私は彼らを解放してくれる人間が早く現われる事を願って止まなかった。しかし、私は後年うっかりこの話を人に話してしまった。(別に彼とは人に話すなと言われた訳でも約束した訳でもなかったので)すると、「怖い、それって、出口の人間はどうなっちゃうの?そんなのが沢山出て来た時に(肉体が)弾けない?裂けちゃうんじゃないの?」と言われた時に、たまらなく背筋がゾーッとしたのだった。

つづく