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はじめに…私は蒲田(かまた)に住んでいた事があります。あの辺りは古代の遺跡も多く、地名に塚の字も多く古代から墓地だった様です。
蒲=がま("水辺"に生える草。蒲の穂はロウソクの様な形をしている)の事です。昔それがたくさん田んぼに生えていたので、この地名がついたものと思われます。(と私は推測しました)
蒲の穂と言えば、
因幡の白兎ですね。
大国主尊が「赤むけの体は清水で浄めて、蒲の穂を敷いて寝転がるといい」と教えてくれたあの蒲の穂ですが、私の通っていた小学校の名札の下敷きが、蒲の穂で出来ていたのです。当時の先生が、そう教えてくれてこのお話をしてくれました。それは、習字の時に使う下敷きに良く似ています。フェルトみたいです。
手触りはもう少し、ぶわぶわっ、とした感じでした。柔らかくて、繊維が付きそうなので、成る程白兎の体には良さそうこういう、個人的な思い出もあるので、大国主尊には特別に思い入れが
あります。


なんで、大国主があんなに大きな袋を担いでいる姿で登場するかわかります?
そう、兄達が旅の荷物を全部、彼一人に押し付けたからなんですね。
昔の古代の日本は末子が全ての財産を相続していたらしいです。
親は何時の世も末っ子が心配な様です。ましてや寿命の短い古代の事
一緒にいられる時間が少ないので、せめて財産だけでも、と思うのでしょう。
しかし、それでは他の兄弟達が面白くありません。で、下手をすると、親の愛情が裏目に出ていた様です。
(親が死んだ後、すぐに末子も殺されて、全部長子に取られちゃった、
なんて事がよくあったらしいですよ。なにしろ、一番上と下では親子位年の差があったりするのがざらですから)
で、大国主尊も末子だったと思うんですね。なもんで、兄弟達の嫉妬といじめが、まあ物凄かったんです。
オオナムチエピソード1. "兄神達によるウサギ虐めと求婚"(因幡の白ウサギ)
大国主命がまだ大穴牟遅命=オオナムチノミコト
(おおあなの中にいる偉い人と言う説"後に出てくる根の国の冒険記から"とそして、大己貴もしくは大汝命と書いてオオナムチと読む場合から"おのれ"や"なんじ"と言う言葉に関連があるとされる説がある)と呼ばれていた頃、
オオナムチの兄達(八十神=やそがみと言う。八十人と言うより、やたらと数が多いと言う意味である)は因幡の国(今の鳥取県東部)に住む八上姫=ヤガミヒメを妻にしたいと思っていました。
そこで、ヤガミ姫に求婚しようとみんなで因幡の国へ行く事になったのです。
兄神達はオオナムチに荷物を持たせ、まるで家来の様にこき使うために彼を連れて行きました。
因幡の国の気多(けた)岬まで来た時に八十神達は砂浜にウサギが皮を剥かれて横たわっているのを見付けました。
ウサギがまだ生きているのを知ると、八十神達はウサギに
「海水で身体を洗い、その崖の上に立って身体を乾かせば元に戻るだろうよ」と言って、笑いながら去って行きました。ウサギは言われた通りに海水で身体を洗い、崖の上に立ちましたが、海水は傷にしみ込み、風に吹かれると皮膚が乾いてひび割れ刺す様に痛みました。
あまりの激痛にウサギが呻き泣いておりますと、そこへ旅の荷物を一身に引き受け袋を担いだ下男姿のオオナムチがえっちらおっちらと通り掛かりました。
ウサギの姿に気付くと
「一体どうしたんだい?」
とオオナムチは優しく声を掛けました。ウサギは
「私は隠岐(おき=島根県にある島)に住んでいるウサギです。私は海を渡って遊びに行こうと思い、ワニを騙しました。ワニの一族と私の一族のどちらが数が多いのか競おうと持ちかけ、ワニを橋のように海に並ばせ数を数えるふりをして、その背中を踏み越えてやって来ました。ですが、もう少しで渡り切るという時につい、有頂天になり騙した事を告げてしまったのです。ワニ達は怒り私の皮をむしり取ってしまいました。そして、私が砂浜にうずくまっておりますと、沢山の男の神がやって来て、海水で身体を洗って崖の上で身体を乾かせと教えてくれました。ですが、その通りにするとあまりに痛くてたまりません。それで泣いているのです」
と答えました。
驚いたオオナムチは
「急いで身体を洗いなさい。今度は河口の真水で良く身体を洗ってから、蒲の穂を敷いた上に寝転がっていると良い」と言いました。
ウサギがその通りにすると痛みが無くなり、白い毛がふさふさと生えました。
傷の治ったウサギは
「どちらにいらっしゃるのですか?」とオオナムチに聞きました。
オオナムチは「私はヤガミ姫のもとへ行くのだよ」と答えました。
ウサギはじっとオオナムチを見ると、
「きっと、兄神達はヤガミ姫を得ることは出来ないでしょう。ヤガミ姫がお選びになるのは今、袋を背負う卑しい姿であるあなただからです」と言うと、頭を下げて礼を言いオオナムチの前から飛び去って行きました。
このウサギは実はヤガミ姫の使いの"兎神"でありました。
ウサギがこの一件をヤガミ姫に話したためかどうかは判りませんが、結果はウサギの言った通りになりました。

ここで、ヤガミ姫の使いの"兎神"でもある、と言うこのウサギの事を考えてみました。このウサギはやはり、何らかの呪術的な役割を果たしている様です。
オオナムチへのヤガミ姫の予言もそうですが、後にオオナムチが何度も生き返ると言うのも、全く関係無いとは思えないのです。

そもそも、なぜヤガミ姫なのか?です。
彼女が美女の誉れ高いとは書いてありません。彼女は神々にとって欲しい何か、を持っているのではないでしょうか?
ウサギと不死(月との関係)を思い浮かべるのは考え過ぎでしょうか?

オオナムチエピソード2 "兄達の嫉妬によるオオナムチ殺人事件"(赤猪)
兄神達はヤガミ姫のもとヘ着き早速求婚しましたが、ヤガミ姫は首を横に振りました。
「残念ながら私の夫はあなた達の中にはいない様です。私の夫となるべき人は袋を担いだ人だからです」
そこへ遅れてオオナムチが袋を担いだ姿で登場しました。
兄神達は"あっ"と驚き、"きょとん"とした顔のオオナムチを睨み付け、
「さっさと帰るぞ!!」
と言い捨てて、帰路に着きました。
しかし、普段から馬鹿にしていた末っ子のオオナムチにしてやられたと思うと肚の虫が治まりません。
ついに兄神達はオオナムチを亡き者にしようと相談しました。
そして、伯岐国(ほうき)の手間(てま)の山まで来るとオオナムチに言いました。
「ここの山には赤い猪が住んでいる。私達が上で追い立てるから、お前は下で待ち受けて捕まえるのだ。もし失敗したら、お前をぶっ殺すからな!!」
とたっぷり脅しをかけて山に入りました。
そこで大きな石を真っ赤に焼いて、上から転がしてオオナムチに声を掛けました。
「そら、行ったぞ、ほらほら捕まえるのだ」
正直に焼け石を抱きとめたオオナムチは焼け死んでしまいました。……
オオナムチが死んだと聞かされた母親のサシクニワカヒメは高天原(たかまがはら)へ赴きカミムスビノカミにオオナムチを生き返らせてくれる様にと頼みました。
するとカミムスビノカミはキサカイヒメ(赤貝の女神)とウムカヒヒメ(蛤の女神)を御遣わしになりオオナムチに貝殻を削り貝の汁と混ぜたものを身体に塗って治療を施しました。
するとオオナムチは元の様に元気になりました。
それを知ると兄達はくやしがり、再びオオナムチを殺そうと相談しました。
そして山へ入ると樹を伐り裂いて、楔を打ち込みました。この楔をはずすと樹が元通りになるように仕掛けておきました。そこへオオナムチを連れて来て、言葉巧みにそこに入らせると楔をはずしました。樹は勢い良く元に戻ろうとしオオナムチを挟み込んで叩き殺してしまいました。
今度も母親がオオナムチの亡骸を見つけるとその樹を引き裂き、オオナムチの身体を引き出して蘇生させました。そして、「あなたはここにいるとまた、兄さん達に殺されてしまいます。木国(きのくに=今の紀伊国、和歌山県)にお逃げなさい」
と言って、オオナムチを知り合いのオホヤビコノカミの元へと逃がしました。
しかし、兄神達はここまでも執念深く追い掛けて来ました。矢をつがえオオナムチを狙いました。奸計が通じないとなると、今度は殺意むき出しです。
こうなると、始末に終えません。
オホヤビコノカミもこれには参ってオオナムチを兄の魔手から庇い逃がしながらも言いました。
「もう、根の堅州国(ねのかたすこく)へ逃げるしかありません。あそこなら、いくらあなた達の兄神でも手出しが出来ないでしょうから。素戔鳴尊(スサノオ)さまに御相談なさい」
そこで、オオナムチは言われた通り根の国へ逃げました。
大国主命について、
末子だったせいか母親の溺愛ぶりは相当なものだったようです。大事に育てられた子供らしく天真爛漫で人なつこく、物事を深読みするのが苦手、と言うより、人が良くて疑う事を良しとしないのでしょう。
恐らくは、のほほんとした雰囲気と笑顔で女性を虜にしたのでしょう。
この絶大な権力を持つ子供の様に頼りな気な男に母性本能をくすぐられるのかも知れません。
容姿はというと、あの素戔鳴尊が一目見て、葦原色許男(あしはらのしこお=地上の我々の現在住んでいる世界から来た醜い男、言う意味)と言ったといいますが、スサノオの場合は"俺様が基本"ですから、オオナムチは全くその逆を行っていたのでスサノオの審美眼に叶わなかったと思われます。
ではスサノオの逆と言うと、完全なやさ男です。
見るからにいい男だが、腕力も知恵(奸計に通じるもの、目から鼻に抜ける位の知恵で知識ではありません)もイマイチで、包容力の無い頼り無い奴、と感じたのでしょう。
スサノオはオオナムチを見くびり無理難題(嫌がらせに近い)を押し付けます。しかし、この時も持ち前の育ちの良さによる礼儀正しさや、優し気な物腰で女性を(素戔鳴尊の娘の須勢理姫=スセリヒメ、後に大国主の第一婦人)虜にし味方に付けて難を逃れたのでした。
スセリ姫のスセリは"物凄い勢いのある様"を意味しているのでなる程、すごく気の強い人だったらしいです。
にも関わらず大国主命としてからは、現地妻が多数いた様です。それには女性にだらしない男という見方と、各地の支配を揺るぎなくする為にはその地方に親戚を作る事で、支配者の大国主は止むなく各地で女性と婚姻関係を結んだ、と言う見方があります。はてさて、はたして彼はどちらだったのでしょうね?
オオナムチエピソード3 "オオナムチ、スサノオの試練に耐え、ついに大国主に出世!? す! "
オオナムチは根の国の素戔鳴尊(スサノオノミコト)の元へ訪ねて来ました。
すると中から若い娘が出て来ました。スサノオの娘の須勢理姫(スセリヒメ)でした。二人は一目でお互いを気に入ってしまい、父親には内緒で結婚してしまいました。
スセリヒメは何喰わぬ顔で父親の元へ行き、
「今この家の外に、"立派な若者"がお父様を訪ねて参りました」
と言いました。
スサノオが外へ出て様子を見て戻ると
「何が立派だ! あいつは葦原色許男もいい所じゃないか!! 」
と言い、少し考えてからにやりと笑うと
「いいか、あいつを蛇の室(へびのむろ=蛇の住んでいる穴蔵)に案内するのだ」
と娘に言い付けました。スセリヒメは真っ青になりました。
愛しい夫を蛇の部屋で寝かせるわけにはいきません。しかし、父親の命令は絶対でした。仕方なくオオナムチを蛇の室へ案内しました。
が、オオナムチにそっと蛇の比布(ひれ=ネッカチーフの様な物で古代人は布の振れる様を呪術的な威力があると感じていた)を渡し
「もし蛇が襲って来たらこの布を三度振って下さいね」
と言いました。オオナムチは蛇の室に入りました。すぐに蛇がうようよとオオナムチの足元まで這って来ました。勇気を奮い起こし、オオナムチは比布を三度振りました。すると効果はてきめんで、蛇はもと来た方向へと大人しく引き下がって行くのでした。
翌朝、げっそりとやつれた顔を見せるとばかり思っていたオオナムチが、晴れやかな顔を見せたのでスサノオはむっとして今度はムカデと蜂の室に案内する様にと言いました。
今度もスセリヒメはムカデと蜂の比布を出し同じく三度振る様にと言ってオオナムチに与えました。
こうしてまた無事に過ごしたオオナムチを見て、スサノオは今度は自分に付いてくる様に言いました。
「今から矢を射るので取って来い」
と命じ、辺り一面が背丈程にうっそうと草の茂った草原へ向けて、思いきり弓を引き矢を射ました。
オオナムチが素直に矢を取りに行くのを見届けると、スサノオはすぐに草原に火を放ちました。そして
「やれやれ、これでせいせいした」
と家へ戻りました。
だだっ広い草原で矢を探すという、まるで海岸で10円玉を見付ける、という位難しいその作業に懸命に没頭していたため、オオナムチはまんまと逃げ遅れてしまいました。
あまりの事に茫然自失していると、足元から
「外はぼうぼう、内はからから」
と言う声が聞こえて来るのに気付きました。
見るとネズミが懸命に自分に何かを訴えています。オオナムチはネズミの言葉をちょっと考え、地面を踏みしめてみました。
すると、大穴が開きオオナムチはその中へ入って難を逃れる事が出来ました。
その上、そのネズミはスサノオの放った矢をくわえて来ました。そして、謝る様な仕草でオオナムチにそれを渡します。見ると子ネズミがやったのか、矢羽が食いちぎられ無くなっていました。オオナムチは
「そんな事は気にしなくていいんだよ」
と優しく言い受け取りました。
焼け野原にはオオナムチの葬式の準備にスサノオ親子の二人がやって来ていました。しかし、穴から這い出しニコニコしながら矢を差し出すオオナムチを見て、泣いていたスセリヒメは喜びスサノオは憮然としました。
家へ帰ると、今度はオオナムチを自分の部屋へ呼び付けスサノオは言いました。
「私の頭のシラミを取ってくれないか?」
「それはお易い御用でございます」
とオオナムチは快く引き受けましたが、スサノオの髪の毛をかき分けるとシラミではなく、ムカデがうようよと蠢いていました。
「どうした、早く取ってくれないか」
とスサノオは急かしますが、オオナムチは考え込んでしまいました。
というのも、古代人はシラミを取ったらそれを歯で噛み潰して吐き出す、というやり方をしていたのです。ムカデを噛み潰す事など、オオナムチには出来ません。しかし、やらなければスサノオが納得しない事はいくら人の好いオオナムチでもわかります。
そこへ、またもやスセリヒメがそっと近付き目配せしオオナムチに椋の実と粘土の固まりを渡しました。賢いオオナムチはその意図を素早く見抜き、椋の実を噛んでプチプチと音を立てて、さもムカデを噛み潰していますよ、とアピールし粘土を口の中に含んでつばに混ぜて床に吐き出すと、それはムカデのぐちゃぐちゃに潰れた死骸に良く似ていました。
スサノオは言い付けを守るオオナムチに満足し安心すると、いつしか寝入ってしまいました。
そこで、オオナムチはスサノオの髪を束に取り、その部屋の柱という柱に結び付け、部屋の前には大岩を転がして来て出口を塞いでしまいました。
そして、スセリヒメと申し合わせスサノオの武器、"生太刀"(いくたち)、"生弓矢"(いくゆみや)=まるで生きているかの様に動く素晴しい武器、生命力の象徴でもある。と宝の"天のぬ琴"を盗み出し、オオナムチはスセリヒメを背負うと一心に逃げ出しました。
しかし、逃げる途中で琴の弦が樹の枝に触れ鳴り響いてしまいました。この琴は人の心を奏でるので、オオナムチの心の中の焦燥感や諸々の感情そのままに大音響を発してしまいました。
地に鳴り響くその音色にスサノオは飛び起きました。そして何が起こったのかを素早く悟ると立ち上がろうとしました。けれど、オオナムチの細工の為に柱はことごとくスサノオに引き倒され、部屋は崩壊してしまいました。スサノオは柱から髪を解き終わると、すぐに二人の後を追い掛けました。
けれど、その頃には二人はもう現世とあの世の境目であるヨモツヒラサカまで逃げおおせていたのでした。スサノオはその坂を逃げるオオナムチに向って言いました。
「オオナムチよ!! 私の武器、私の宝、私の娘はお前にくれてやる。いいか、お前はその武器で兄神達を地の果て、海の底までも追い払え。もしそれでもお前に刃向かうのならことごとく殺してしまえ。そしてお前は偉大な葦原の国の主"大国主(おおくにぬし)"となれ。そうしてこそお前は"宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ=)"ともなれるのだ。スセリヒメをよろしくな。娘の為に宇迦(うか)の山(出雲にある)のふもとに立派な家を建ててやってくれ。わかったな葦原色許男よ!」
この時、スサノオは馬鹿にしていたオオナムチにしてやられたのを満更でもなく思いました。自分を容易く出し抜く男なら大事なスセリヒメを任せてもよいとまで思ったのでした。……
そしてスサノオの言う通りに、兄神達を地の果て、海の底までも追い払い服従させたオオナムチはその武力を以て、八千矛神(やちほこのかみ=沢山の武器を操る神、武神の意)とも呼ばれる様になりました。
ここで蛇の室、ムカデと蜂の室、そして草原でネズミの教えてくれた穴とオオナムチは穴の中で試練を克服します。
この故事から、"偉大なる穴の中の男"と言う意味でオオナムチと付けたのだと思ったのですが。だから、最初から決してオオナムチという名前では無かったはずです。
多分、古代の人に後から名を送るのはありふれた事で、オオナムチも元々は大した名前でも無かったのかも知れません。それに色々と含みを持たせ、二重三重に意味を持たせる名前でなければならないのかも。
何しろ、スサノオの実質的な後継者(娘と婚姻して三種の神器の様に武器なども貰った=盗んだ?)"偉大なる葦原中国の支配者"という身であったわけですから
おまけ、私は少名彦名(スクナビコナ)の話が好きです。
〜一定の年令以上の人には懐かしい物語〜
知らない人の為に御紹介します
外伝"オオクニヌシ、スクナビコナノカミに出会う"
ある日、オオクニヌシが出雲の海岸を歩いていると、波間に小さい舟がゆらゆらと揺れています。
よくよく見ると、それは天のかがみの舟(ガガイモの実のさやを割って舟にしたもの)に乗った、蛾の皮を剥いで作った着物を着た小さな神でした。
オオクニヌシはお伴の者に「誰かこの者の名前を知らないか?」と聞きました。
が、誰も知りません。
そこへタニグク(ヒキガエルの事)が
「クエビコ(案山子=かかし)なら知っているかもしれません」と答えました。
そこですぐさまクエビコが呼ばれました。
クエビコは歩けないけれども、この世の事を良く知っている神だったのです。
クエビコは「これはカミムスビの神の御子でスクナビコナノカミです」
と答えました。
オオクニヌシがカミムスビノカミに尋ねますと
「それは確かに私の子である。あまりに小さいので私の指の間から、漏れ落ちてしまったのだ。オオクニヌシよ、お前はスクナビコナと共に葦原の国を治めるのだ」と答え命じました。
それから二人は諸国を周り薬事や農耕の技術を広め、お陰で国は見る見る豊かになりました。
そして金の穂が実る頃、「これで私の役目は終わった」
と言って、スクナビコナは粟の実に弾かれて、常世の国へと旅立って行きました。
そして少名彦名を題材にしたものに『水の旅人 侍KIDS』という映画があります。ある日少年は川辺でとても小さな侍に会った。名を、墨江少名彦(すみのえのすくなひこ)という。彼は水の精で海を目指していると言い、しばらく少年と暮らす。という物語。少年が現代のモヤシ児なのだが、この一寸法師みたいな水の精との触れ合いで少し逞しくなる、という心暖まる夏休みにちびっ子に見せたい物語である。


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