話のあらすじ、大店(おおだな)の若旦那に騙され弄ばれて孕んだ金髪の女(志乃)が、若旦那の雇った殺し屋から逃げた先の宿屋で怪異(モノノ怪=座敷童子)に遭遇、という物語なのだが、絵が独特なのは前作に続き勿の論だが、宿屋の描写が見どころ。件の宿屋だがモデルは東京目黒の雅叙園らしい。う〜ん、見てみたい。食事すればみられるらしいが、格式が高そうなんできちんとした恰好しないと恥ずかしいから誕生日位に連れて行ってもらうしか無いなぁ、とほほだが。

(正体)

(何が起こったか)

(気持ち)

(結果)
妊娠した女郎(売春婦)の堕胎された赤子の魂がその堕胎部屋に集まって形を成した座敷童子である。 今は健全な宿屋の体を成してはいるものの、元々は借金の為に売られた女性が働く岡場所。妊娠すると働けないという理由で女達が否応なく堕胎させられていた。宿屋の女将がそれに手を染めていた。人助けと称して。 モノノ怪となった赤子達はただ、産まれたい そして愛されたかった だけである。しかし、赤ん坊なのでその要求を満たす事しか考えられず、無関係の妊婦とその赤子に取り憑き産まれようとした。しかし取り憑かれる側は生死に関わる事となる。 父親から望まれないと言う同じ立場のはずの赤ん坊が、母親に限り無く愛されている姿を見た時に、そういう母親がいて、なおかつモノノ怪の自分達にも愛情を注ごうとしたのを知ってうれしかったのだろう。大人しく薬売りに斬られる事を選んだ。
逃げて来た女、志乃は妊娠している。4ヶ月後に産まれると言っている割には、臨月の様な大きさに見える。 若旦那は恐らく奉公人の金髪で異人の風体の変わった女と遊ぶつもりが孕ませてしまい、両親が孫の為に泣く泣く許そうとしたが、息子が遊びだと判って荒くれ者を使って女を襲わせて(性的な暴行)店に居られなくした上で、人知れず親子共々始末しようと計画した。 若旦那を信じていたが、真実を見せられたので(それとも薄々察していたのか)自分の立場に気付いた。なのに赤子を産みたい気持ち、愛しく思う心は変わらない。そして大人の勝手な都合で命に成れなかったモノ達に同情し、等しく産み落とそうとする母性の強い女性である。 モノノ怪を受け入れる事は、自身の赤子の死と引き換えであるのを悟り、最後の最後で子供達の魂を泣いて謝り拒んだ。モノノ怪が斬られてから腹部が小さくなっている(適正な大きさに戻った)のは、最初から目を付けられて=お腹に入り込まれて、宿に誘き寄せられたからだろう。
感想 宿屋の女将の「甘いねぇ、バカな娘だ」と言う様な発言は半分だけ当たっている。まず、残念だが恐らく江戸時代らしき時代設定だと思うのだが、その頃の日本の豪商は奉公人を嫁にもらう事は希有だろう。ましてや彼女は外見が異国人である。鎖国下での日本なら市井でこの容姿は差別対象にならない方が不思議だ。豪商で無くても商人は信用が命なので、残念ながら若旦那は最初から遊びで、「愛している。夫婦になろう=結婚しよう」などと甘い言葉を囁いてその気にさせたのだ。そう、許されるもされないも、遊びだから両親の反対など気にも留めないし、恐らく両親も見て見ぬ振りをしていたのだろう。彼女が妊娠する迄は。それを見抜けずに本気になった女に「甘い」と言うのは確かだ。しかし、彼女は騙されたとは言え相手を信頼していたし愛情もあった。子供の立場からすれば父親に望まれないのは同じだが、女の立場からは大きく違うと思う。(しかし男は良く減るもんじゃ無いだろうとか言うが・・・馬鹿? ですね。増えるから困るんだし。いざ出来ちゃって責任取れんの?って聞かれてもこういう事を平気で言える馬鹿は、勿論無責任なので無理でしょうwよって「考えが甘い女」はダメだと言う事です)この主人公の女性は真と理を持って若旦那を愛していたし、妊娠も後悔していない。だから赤子にもきちんと責任が取れるのだろう。命を狙われていても、だ。だから考えが甘い所はあったろうが、その後の行動を甘いとは言わせたく無いのである。多分、女将は自分の昔を思い出して対比し、僻み嫉妬して言ったのだろう…。無くした安産の?"お守り"が"こけし"の色とも同じで、座敷童子の色もまた同じなのがお腹の中の赤子との同一性を示しているし、こけしが所謂水子地蔵の代わりであって、座敷童子の付けている腹巻の伸びてる布がへその緒で女=母親に繋がっているのも分かりやすい。が、怯える座敷童子と若かりし頃の美貌の女将がその布を手にかけて引きずり倒す様が、鬼気迫る堕胎の有り様さながらで怖い。若旦那(も積極的に関与しているに違い無い。お志乃を男に襲わせたのは確実に若旦那の仕業。笑いながらそれを見ている描写あり!)と両親の企み(男の子が産まれでもしたら身代を狙いかねないから殺しておこう)も鬼畜で怖い。この物語はモノノ怪よりも出て来る人間の方が怖い。

モドル