「ちっ、千里の親分さんか。ふん、やなこった」
「とざい、向かって左に見えまするは、世間を騒がすお役者泥棒、俗に言ういんこ小僧にござりまする。昼は軽妙洒脱なお役者稼業で七変化。しかし夜ともなればその実態は大泥棒のいんこ小僧。かの儀賊は身のこなしも軽やかに、芝居見物で御祝儀を渋る大棚からしか盗まず、殺さずをモットーに江戸の市内を荒し回っておりまする。片やいんこを執念ぶかーく追い掛け回すのは、芝居?何それおいしいの?と腕も気風も度胸も、そんじょそこらの男よりも男らしい、男勝りが珠に傷、の千里の親分。父親の代から筋金入りの御用聞きのサラブレッド。江戸の正義を守る為、儀賊いんこを追い掛ける。そのため口上左様。とざい、とーざい」うそだけど 「いんこ小僧、まちやがれっ!!」


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