このページの主な内容。映画化された金田一耕助シリーズの感想とあらすじのさわりの部分をご紹介!!

 まあ、言うなれば私見の金田一耕助評もちょっぴり入ってます。しかし考えてみたら、推理小説のあらすじを書く事程、馬鹿な事はない!! と言う事に気付きました。で、さわりの部分(本の)だけで、あとは映画の雰囲気=感想みたいなもの、などをお話しします。極力ネタばれは慎んではおります。
「本陣殺人事件」 角川文庫
 この本陣殺人事件の映画の見所は、今はネクタイのようなネジネジが自慢のダンディーな中尾彬氏が当時の近代のヒッピー風な若者の姿で登場します。中尾氏かなり若いです。身体もセクシーに引き締まってますので必見! しかし何と言ってもこの映画の中の地方の土着的な、因習めいた雰囲気が結構たまらないです。この"いかにも"の雰囲気が、実は私はちょっと憧れていたりするのです。ああ、一度でいいから私も大きい農家のお家に(座敷童子=ざしきわらし、付きでも可!! )泊まってみたい〜と思うのでした。
あらすじ
岡山県の旧家である本陣の後裔の"一柳家"で結婚式が行われた。新婚初夜を迎えた新郎、新婦の二人が翌朝には他殺体で発見された。現場は完全なる密室状態。そして、そこには三本指の血の手形が残されていた。犯人ははたして三本指の男の仕業なのか?…金田一さーん、事件ですよ〜。完全犯罪に挑むべく、金田一耕助颯爽登場!!

「八つ墓村」 角川文庫
 トヨエツ(豊川悦司氏)でリメイクされましたが、あんなものではなかったです。この渥美清版金田一では一大ブームとなり、(ショーケンが主人公〜♪)「たたりじゃー!!」の絶叫は流行語にもなりました。トヨエツのリメイク版映画の宣伝のために、テレビでこれを放映した時は、かなり大胆なHシーンがことごとくカットされてました。(ゴールデンタイムだったせい?)この話は実話の"津山の30人殺し"の場面が基になっているだけに、山崎努が着物の前をはだけ、額に"はちまき"をしそこに懐中電灯を差し込み、日本刀と猟銃を手に裸足で駆け回る様は、まさに能楽の鉄輪(かなわ)の鬼そのものの形相で、なるほど鬼気迫ったものがありました。横溝ものにつきものの血と怨念のどろどろの世界がここにも繰り広げられています。血脈をぶち切りたい衝動に駆られる事請け合いです。映画版では、一番"横溝ワールド的"だと思います。私個人的には一番好きな作品です。ただ、金田一ファンには「ちょっと〜、」ですね。ここにも双児(ばばさま)が出て来ます。もしかして双児というものになんらかの意味があるのでしょうか?(他、悪霊島にも出てくる)ちなみに渥美清が金田一さんをやっているのが一番好きです。本来の金田一さんのイメージとは少し(だいぶ?)違いますけどね。なにせ寅さんのイメージが強すぎて、私は登場の時に金田一役を知らなくて"物売りのおじさんか?"と思いました。
あらすじ
 青年"寺田辰弥・てらだたつや"はある日ラジオの尋ね人で自分を探すものがいるのを知る。彼は7才にして実母を亡くし己の出自を知らぬのであった。弁護士を通じようやく祖父と対面するも、その会見の最中祖父は急死してしまう。そして、八つ墓村へと帰った彼を出迎えたのは、濃茶の尼と呼ばれる異様ないでたちの老女だった。「かえれ、かえれ。八つ墓明神様は御怒りじゃ!!おまえが来ると、またこの村が血でけがれるぞっ!!」次々と起こる殺人は、二十六年前の事件の再来なのか?それとも、数百年前に村で起こった落ち武者狩りの亡霊達の復讐なのか? "たまたま事件帰りにこの村へと立ち寄った"金田一耕助登場。

「悪魔の手毬歌」角川文庫
 これは石坂浩二版・金田一です。とにかく、"原作通りのスタイル"をやって下さった功労は大きいと思います。難を言えば"良い男過ぎ"な位ですが、彼だからこそ、金田一の女性ファンが急増したのもまた事実です。(テレビ版の古谷一行は金田一さんにしては、ちょっと線が太いです。が、優しそうな感じで中々でした。こちらも人気ありましたね〜。古谷さん、調子に乗ってギター弾いてLPも出してました。息子の職業はやっぱり血筋!?)茜色に染まる峠道を90°に腰の曲がったお婆さんが金田一耕助とすれ違う場面が描かれていました。それは、"夕暮れ時のほのぼのとした美しい景色"には違いないのですが、横溝モノではそれはたちまち逢う魔が刻となり、老婆も魔女へと変容を遂げるのでした。(しかも、殺しの場面が凝っていて映像的にも怖い)これも"笛を吹く"と同様に音楽が重要な役割を果たしています。こちらは、手毬歌ですけれど子供の澄んだ歌声は、マザーグースのようで、無邪気なものが時に無意識にいかに残酷になれるかを知っている者ならば、不可解な無気味さを感じ取る事でしょう。やはり金田一ファン(古谷さんファン)の友達が、この手毬歌を覚えようとしていた記憶があります。テレビ版(土曜日放映)も絶好調でした。
あらすじ
 数々の難事件を解決した金田一耕助は、休暇を取ろうと思い立ち、岡山の磯川警部の元を訪れる。そこで"鬼首村"(おにこべむら)を紹介された耕助は早速、その村へと赴くのだが、のんびりする所か、村に伝わる手毬歌の歌詞通りのやり方で、若い娘が殺されるという事件が次々と起こるのだった…

「犬神家の一族」角川文庫
 ちょっと反則ですが、人間の足が二本にょっきりと 、水面から突き出ています。あれは何? 誰? 本物の足だとすると、死んでいるに違いない!! と思うだけで、"うわっ!!"となります。確かそんなポスターだった気がします。そしてもう一つ、外科医の手袋を思わせる色をしたゴム製のマスク。目と口の部分に切れ目が入り、頭からすっぽりと入るそのマスク、それを付けた顔はいかにも白々しく、作り物めいて無気味でした。この物語はもう、この人物の一人勝ちです。予告のこれだけで人を恐怖のどん底、怖いもの見たさの心理を刺激したものは、それまでにはなかったです。華やかな羽振りの良い旧家で起こる、近代化した日本で忘れ去られそうな"骨肉の怨念"を日本的に見せてくれました。石坂版・金田一です。が、私は被害者達を見る度に金田一さんが絶叫していたのがなんとも…。
あらすじ
 ある日、耕助の元へと一通の手紙が届いた。差出人は古館法律事務所の弁護士である。それには、"犬神家の遺言状が公開されると、血みどろの事件が起こり、幾人もの犠牲者が出る。"と書かれてあるのだ。興味を覚えた金田一耕助は信州の犬神家へと向った…

「悪魔が来りて笛を吹く」角川文庫
 これは珍しく聴覚に訴える物語でした。フルートの音色が、まるで歌劇の魔王のような雰囲気を持っています。美しくも物悲しく胸に迫り、"ああ人間の背骨に風が抜けたらこんな旋律を奏でるのかも知れない"と思わせる様なものでした。(この頃やたらと骨の記述が多い本を読んでいたので…ついそう思ってしまいました)気が付くと私は無意識にメロディーをハミングしていたりするのです。(もちろんテーマ曲ですから!! テレビ版などもフルートの曲がちゃんと出てましたが、映画のものにはかないませんとも! )これも、実録モデルの事件が出て来ますが、事件が事件であり(結局は迷宮入りのものだったので)この物語の中では金田一さんの絡む事件自体には、さ程重要だとは思われませんでした。この映画は、西田敏行版の金田一さんです。太めの金田一さんに呆然、あ然!! でも、映画の出来自体は悪くありませんでした。
あらすじ
 警視庁の等々力(とどろき)警部の紹介である"事件の依頼人"は、ついこの間失踪し遺体で発見された"元、子爵の椿氏"の娘であった。「父は、本当に死んでいるのでしょうか?」椿氏は、実は"天銀堂事件の容疑者"と疑われたのを苦に自殺したと言う。そして、見付かった遺書には娘への謝罪と「悪魔が来りて笛を吹く」の謎のメッセージが記されていた。闇に響くフルートの音色は、死んだはずの椿氏が戻って来て悪魔となり奏でているのだろうか…

「悪霊島」角川文庫   
 鹿賀丈史さん(私的には、料理の鉄人よりもジーザス・クライストねと思う)が金田一耕助役でした。それよりもテーマ曲がビートルズのレット・イット・ビーだったのが衝撃的というか、ハイセンスを狙い過ぎて反って違和感が…。というのが思い出に残っていますね。キャッチコピーの「ヌエの鳴く夜は恐ろしい」と言うのとポスターにシャム双生児の赤ん坊の骨?ミイラみたいなのが写ってるのが、横溝〜という感じで、やってくれちゃった感がある作品でしたね。金田一さんは飄々とした、というのがピッタリです。風来坊みたいな風に飛ばされそうな、ちょっと頼りなさそうな感じは良く出てました。それと岩下志麻お姉様が超絶美しい。この頃は映画の「この子の七つのお祝いに」とかあの「北の蛍」とか「魔の刻」など志麻様のお姿を全部見ましたぜ!
あらすじ
金田一耕助はアメリカ帰りの実業家に人探しを依頼される。しかし、その捜索人が殺されてしまう。その男の最期の言葉が録音されたテープには「ヌエの鳴く夜はおそろしい…腰と腰のくっついた双児」など不気味で不可解なダイイングメッセージが残されていた。その真相を突き止めようと金田一耕助は依頼人の待つ瀬戸内海に浮かぶ刑部(おさかべ)島にむかうのだった……。

関連書
★金田一作品を読む上での好著
『名探偵・金田一耕助99の謎』大多和伴彦著〈二見書房 二見WaiWai文庫刊行〉

★パロディ本、(でもしっかりした内容です)
『探偵の夏あるいは悪魔の子守唄』もしくは改題『横溝正史殺人事件』岩崎正吾〈創元推理文庫刊行〉

私が最初に読んだ金田一本は、獄門島でした。それまでは、ショートショートSFの星新一の本やジュブナイルの江戸川乱歩の少年探偵団(明智小五郎)シリーズなどを読んでいました。獄門島でハマってしまい、ちょうどテレビ放映も始まったのでますますのめり込んでしまいました。今はkindleの電子書籍で横溝正史をたくさん購入して読んでます。時折、読み返すと忘れていた箇所があったり新たな発見があったりして、面白いです。