『死の味』(上・下巻)P.D.ジェィムズ ハヤカワポケットミステリー
ある上院議員がホームレスの男と共に死体で発見された。場所は教会である。彼には過去殺人に関するスキャンダルがあり、その事で最近強迫され悩んでいたらしい。以上の事を踏まえると、ホームレスを道連れにした自殺のようにも思える。捜査を進めて行くと、その教会で奇跡の"聖痕現象"を体験したと話していた事もわかった。なぜ、彼は死んだのか?殺されねばならない動機はあったのか?と言う物語です。
派手な推理などなく、警察は一つ一つ丹念に動き回る地道な捜査で、謎を解明してゆきます。
その中で、色々な人間の思惑や、生活が絡んでいて面白いです。捜査を行う警部とその部下の男女。互いにライバル心を抱いていて、お互いの境遇を妬みもしています。(自由には孤独。安定にはしがらみがつきまとうのに、ですが)全体的に暗いです。
そして、事件は解決してもそれだけです。捜査を行う事で傷付く者はいても、
幸せになる者はいません。犯罪とはまさにそんなものなのです。生きると言うのは、実に切ない事です。
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