西ドイツで六つ子誕生の新聞記事。母子の入院先ハンブルク病院で、保育器の中の赤ん坊を一人、二人と数える人々。だが、その笑顔も六、で凍り付く。女性からは「キャーッ」と言う悲鳴も。六人目の子供はあきらかに畸形だった。担当医師が記者会見で、六つ子は一卵生の三つ子が同時に二つ出来た二卵生の六つ子であり、小さくひ弱なのでただ一人を除いては元気とは言えない状態である、と言う。記者はその一人の写真だけでも、と言うが、医師は拒否する。「ただ一人元気…か」と呟く医師。「ニッシェ先生、わが子ながら…ゾーッとしますで…。うちのヤツが産んだあのバケモノはいってえなんなので…」と保育器の中のわが子を見ながら、六つ子の父親もとまどいを隠せない。ニッシェは「バケモノじゃない、未熟児です。未完成児といったほうがいいかな。つまり完全な五体になりきれずに胎児のままの姿で生まれてきたのです」と答え、六人の中で唯一元気なのでこのままの姿なら育つだろうと言う。それを聞いて父親は落胆する。---頭蓋骨は二つに裂けて、脳膜がむき出し顔半分は溶けてなくなり口とアゴは割れ、耳はエラ状にくびれたままで、手足の指はなく脊柱は曲がっておまけに長い尾骨を生やしている……このまま育ってもだれが人間として認めてくれるだろう。ドクター・キリコあなたなら〜---とニッシェはキリコに手紙を出す。それに応じキリコは空港へ急ぎ現地へ旅立つ。その機内で「ドクター・キリコまた人殺しの片棒か?どこへ?」と声を掛けたのはブラックジャックだった。キリコは「おーきにおせわだよ」と無視しようとしたが、ブラックジャックは「このドイツ航空はボン経由バンブルク行きだ。そこにはハンブルク国立病院がある。おおよそ行き先はそこだな?」とキリコに言う。その頃病院では六つ子の二番目の子の呼吸が停止し、手を尽くすも心臓も停止してしまう。そこへニッシェに呼び出しがかかる。「今一人死んだ所です。あなたはドクターキリコ?」と尋ねるニッシェに「キリコはあやしげな装置を持ち込んで税関でひっかかりました。わたしが密告したせいです。キリコ氏の代わりにきたってわけです」とブラックジャックがしゃあしゃあと言って退ける。「安楽死させたいお客はどこですか?」「これです。ほっとくと怪物に育ちます。ひと思いに天国へ送っていただきたい」とニッシェが言う間にまた一人死んでしまう。「その死体をわたしによこせ」驚くニッシェの抗議、遺族の許しを得てから手続きをすべきとの言葉にも、「そんなヒマあるか」とサクサクと手術をすすめ、奇形児に手足の移植をするブラックジャック。一方あわれキリコは身柄を拘束され、持ち物は「ただの超音波発振器だ」との訴えも空しく留置所に放り込まれる。そこでまた一人死んだという新聞の記事を読むキリコ。ブラックジャックは奇形児の裂けている頭蓋骨を埋める手術を行っていた。その最中にもまた一人赤ん坊が死ぬ。何も知らされていない父親はニッシェに抗議する。「ナキガラひとつみせてくんねえ、いったいなにがどうなっとるんだね?」と病院中捜しまわろうとする父親をニッシェが止める。「みんなおっ死んでたった一人残ったのがバケモノときちゃあ、おら世間に笑いもんにされるだァね」と泣き出す。それに対しニッシェは「ぜったいまともな赤ちゃんを生き残らせてみせますぞ」と誓う。がついに五人目も心臓衰弱で死ぬ。最後の一人はまだ無事との放送に人々は病院の前で「赤ちゃんがんばれェ」「死なないで」とシュプレヒコールを上げる。そんな中、ようやく釈放されたキリコが到着する。がニッシェは「赤ん坊はもういない」と言う。キリコは「生き残ったのはあの奇形児なんだろう、ちゃんと知っているぞ」と言うが、包帯だらけの赤ん坊を見せられ「ブラックジャックだな」と悟る。ニッシェは「さよう。だがたとえ彼がこの病院にこなくっても、わたしはやつぱりこの子を殺すことは思いとどまったでしょうね…。あなたにはきこえませんか…あの声が……」外からは人々の赤ちゃんしっかりーと励ます声が。 |