旧4巻32話『2人のジャン』
モーターボートに乗せられ、客船へ案内されるブラック・ジャック。中にはドイツ医学界外科の権威、ダム教授とディー教授=名前の通り双児、と科学アカデミー副会長の女性アレマ・マレアがいた。そして3人が紹介したのがジャン・マルシャン、五才の男児だった。ごらんなさいとアレマが少年が被っているスカーフを取ると、「シャムの双生児ですか」とブラックジャックは驚いた。顔が二つある=(※補:ページ背景参照)粘土の丸い2つの玉をぶつけて1つにくっ付けたような頭をしている。ジャンは脳を一つ半持っている。2つの脳組織の一つが重なってはいるものの、目や顔面神経はちゃんと2人分ある。ジャンは事実上1つのからだを2人で使っているのだ。文中解説---「シャムの双生児しゃむのふたご」というのは双生児で生まれるはずの赤ん坊が、不運にもからだがくっついて生まれてくる畸形なのだ。いちばん多いのは、腰と胸がくっついている例なのだが、ときにはからだが顔から腹まですっかりくっついているときもある。内臓が両方にまたがってくっついていたりすると2人を切り離すのは、まずできないといっていい---。ジャンの場合1つの脳が活動している=顔が起きていると、もう1つの脳は眠っている=顔が眠って目を閉じている。心の中でどちらが起きるか相談しているらしいのだ。ジャンが去った後、ダムとディー教授は2人の脳を養う栄養が不足しており、このままでは1年以内にジャンは死んでしまうと言う。そこでブラックジャックに2人を切り離す手術を頼みたいと言うのだ。ジャンは1人?ベッドの上で2人で会話する。自分達が切り離されるのを知っているのだ。…ダム&ディー教授は、切り取った方の脳を生かしておける培養液の入った水槽の装置をブラックジャックに見せる。ブラックジャックは成功率が低い事と、気が進まないのを理由に断ろうとしたが、押し切られて手術をする。発育の良く無い左側の脳が切除された。そして脳は培養液の水槽の中に浮かび、それを前に教授たち一同は成功を喜んでいた。しかし、ブラックジャックの顔は浮かない。「おたくの国で、戦争中生きた人間を実験台に使った事がありましたね。生体実験というやつ。あれを思い出してね」とさらりと当て擦りを言う。そこへジャンが目を覚ましてやってくる。いきなり脳の入った水槽にものをぶつけて壊すジャン。流れ出る液体と脳。「せっかく生きられたのに。君はもう1人のきみを殺してしまったんだぞ」という教授に、ジャンは言う。「ぼくたちは相談してきめたんだ。どっちが切りとられても、のこったほうがこうやろうって。ぼくたち、実験動物じゃないよ。実験にされるんなら死んじゃったほうがいいんだい」と。

ダムとディーはルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』にも出て来るトィードル・ディとトィードル・ダムで有名、どっちもどっちみたいな見分けの付かない位そっくりの双児を意味している。だが、元々はイギリスのマザーグースの子守唄に出てくる双児の事で、トィードルとはバイオリンの音の事である。ディーは高音部をダムは逆の低音部を言う、らしい。ジャンの名前のジャン・マルシャンはジャン・バルジャンのもじり?ああ無情w

確かにこの話はやれねえな。単純には手術の際にブラック・ジャックが「ロボトミーおよび脳実質切除術〜」って禁句出しちゃってるからかも、だけど。奥深いぞ〜、この話。まず実際問題として2人を切り離す場合、両方を平等に=からだを分ける、って言うのが前提だが難しいだろう。同じシャム双生児が主題の 萩尾望都の作品『半神』が名作なんで機会があれば読んでみて欲しい。最近海外で体は2人分あるが頭がジャンな少女達をテレビでみた。でその子達の一方が体格が良くなり過ぎでもう一方が肉体的に苦しくなっていると言う、まさにこの『半神』を地で行ってたのを見て、何とも言えない気持ちだ。他にも日本で有名なベトナムの結合双生児ベトちゃんドクちゃんがいる。正常に近い方を有利にしたい、という事でジャンの場合はストレートに命の選択をされてしまった訳だが、それはやはりマズイと思う。それから、軽い連想してみるとこれってルパン三世の映画『ルパン対クローン』のマモーが最後に正体を表わした所の、脳髄が巨大化して培養液に浮かぶ様そのまんまだし。マモーと違って脳みそだけ【本人の承諾なしに】生かしたり殺したりするのは明らかに人権侵害だろう。そしてシャム双生児といえば、ものすごく有名な江戸川乱歩の『孤島の鬼』=漫画『ドクターGの島』高階良子画、を思い出す。この題名ドクターGにしたがゆえにどうしても思い出す元ネタ、『ドクターモローの島』(映画DNA・ドクターもローの島ではマーロン・ブランドの姿が…この映画公開の時に手塚先生がメッセージ寄せていたような記憶がある?)が思い浮かぶ。手術と異形と生体実験。ブラックジャックがずばり文中で言っているように、それはドイツ軍の行ったホロコースト(=ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺)にも否応なく繋がる=国際問題?。日本でも731部隊という研究機関が存在し、生体解剖の疑惑が持たれている。(というかかなり怪しい。だって誰得?なのに関係者証言してるし。考えられるのは証言者が良心の呵責に耐えかねて告白したか、丸っきり嘘なら金?か別の何かを隠そうとして嘘の告白するとしか考えられないじゃん?まさかね…)しかし、そう言った研究のトップに近い者達はどこの国でもそれで得たノウハウ手土産で上手い事やってるからwww(ただし、そろそろ逃れられない因果が巡る時期なんでw)といった感じでまあ、浅慮な私でもここまで連想できちゃうんで、深く考えればそっち方面wからのクレームも付きそうな話ではある。カットされても仕方ないかもねえ。あ〜長文書いてスッキリ!本文より長くなっちゃったぜw



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