旧6巻56話『水頭症』
手塚医師の元へ訪れているブラックジャック。外は土砂降り。「もう帰るよ」と言うブラックジャックを「こんなドシャ降りじゃァ車も走れないぞ」と止むまで待つように手塚は勧めるが「無免許医は病院は居心地が悪い」と逃げるように帰ろうとする。が、その途中病室を窓からチラリと見たブラックジャックは、1人の少年に目を止める。頭でっかちな少年は医長の物まねをし、周りの患者を楽しませていた。手塚はブラックジャックに「水頭症だよ」と告げる。ブラックジャックに問われるままに手塚は、少年は一ヶ月前に入院した事や手術すれぱ頭の大きさは治るが、脳髄が萎縮している為に一生知能障害を起こす事、手術しなければ知能は普通だが頭がどんどん膨らんで2年で死んでしまう事を話す。興味を持ったブラックジャックは病室に入る。少年は頭を下にした格好が楽だと言い、「ぼく芸人になる。あべこべ亭珍保子と名乗るのら」とおどけている。ブラックジャックは少年と二人で話をした。少年は「あとわずかれぼくは死ぬんれしょう」と自分の死期を悟っており、自分の病状もうすうす気付いていた。そしてブラックジャックに「先生ならどっち(の処置を選ぶか)?」と聞き「命を救う為に手術する」という答えに手術すれば一生パパとママに迷惑かけるから、と手術を拒否するのだった。ブラックジャックは手塚医師に少年の病気のデータ一式を借りる。「おれという人間は、死を目の前にしてあきらめきって笑っている病人を見ると腹が立ってくるんだ!!」と食事もせずに考えていた。そんなブラックジャックを心配し、ブラックジャックが風邪を引かないようにとピノコが紅茶を持って来る。一口飲んでブラックジャックは吐き出す「こりゃレモンじゃないぞ」ピノコの「うん、ダイコンなの。ダイコンは風邪に効くわのよ」との答えにブラックジャックは閃く。黒板に図を書き「脳室に溜った液体の代わりにべつのものを入れてやるのだ」と少年の治療法を手塚にレクチャーする。しかし、「君がやってくれないか」と弱気な手塚にブラックジャックは「じゅうぶんな報酬をもらわなければやらない」と断る。「がめついな」との手塚のつぶやきにブラックジャックは激昂する。「他の分野ならいざしらず、患者クランケの命をかけて手術する医者がじゅうぶんな金をもらってなぜ悪い」手塚も「金がとれなきゃ見殺しにするってのかい?」と反論するが、このやりとりを外であの少年が聞いていて、病室に戻って泣き崩れる。ブラックジャックが家でピノコと食事をしていると、電話が鳴る。言った通りのオペをせずに意識不明になって困っていると聞いて、ブラックジャックは大急ぎで病院に駆け付ける。が、手塚はまだ手術はしていない、という。「もしや?」ブラックジャックが少年の元に行くと「ウワーハハハものまねうまかったれしょー」ブラックジャックがきっと来てくれると信じていたと言い、ブラックジャックに自分の手術を依頼する。「ぼく、ぜったい芸人になれるやろ。あべこべ亭珍保子は一生かかっても手術代はらうろ」と言う。ブラックジャックは「その約束、守るな?」と満足そうな顔をして少年を手術するのだった。
この話は台詞に白痴だの知恵おくれだの、今ではバリバリ差別用語として引っ掛かる言葉のオンパレードなんでダメなんだろうか?水頭症になる子どもの話は良く聞くので、意外にポピュラーな病気?【頭に管入れて、みたいな手術してると、前に働いていた所の同僚のおばさんの子が確かそんな症状だった。詳しくは聞けなかったけど。子どもの内は助成金でるけど、成人したら自費だからどうの、と言ってた記憶がある。ヤフの知恵袋でも「妊婦だけど医者から検診の時、胎児の頭に水が溜ってるって言われた」という質問も見たし】。ブラックジャックにはこの少年の心が判りにくかったのだが、実は表現方法が違うだけで、少年は自分なりに精一杯気を使って一生懸命生きているんだ、と言う事に気付いたブラックジャックが自分の患者と認めた話なんだよね。ブラックジャックは自分の患者は大事に思って、結構体張って守ったりするし、金ずくで治療するのが基本ではあるけど、見てると意外に患者を選んでたりするよね。


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